台頭する東アジアの写真シーン

Vol.1 中国編

© Chen Wenjun & Jiang Yanmei

© Chen Wenjun & Jiang Yanmei

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続いては、New Talent Award、三影堂撮影賞の両方のファイナリストにノミネートされ、さらにDummy Award Kasselファイナリスト、Gucang Dummy Awardマーティン・パー賞にダミーブックが選ばれた「Me and Me」をピックアップ。フォトグラファー同士のカップル、チェン・ウェンジュン(1985年生まれ)とジャン・ヤンメイ(1986年生まれ)によるプロジェクトは、個々のアイデンティティと二人の関係性を模索する物語である。

2007年に出会い交際をスタートさせた二人は、毎日のようにお互いを恋人として、ときに撮影の実験のためのモデルとして撮り続けていた。2014年に初の共作「Me and Me」を始めるまでは、それらを作品にすることなど考えておらず、通信社での仕事のために撮った写真のみを発表していたという。「2014年に結婚したのですが、夫と妻という役割が二人の関係性に歪みをもたらし、仕事においても将来について悩んでいた時期」と、チェン。一方のジャンも「昔の私は、完璧主義だったんです。仕事にすべてを費やしたいと思う一方で、伝統的な良い妻でもありたかった。私にとっても無理が生じていた時期でした。まわりを見わたしても、経済の急成長を遂げる中国で働く女性たちは同じように憔悴しきっていた。でも、どうにか解決策を見つけたいと思い、制作に打ち込むことにしたんです」という。二人は仕事を辞めることを決意し、プロジェクトを開始。日常の流れの中ではなくセットアップをして、お互いのポートレイト、二人のポートレイト、他者を含んだグループポートレイトを撮ることで、自分自身と二人の関係性、そして他者の視点から見たその両方の考察を進めていった。

最終的に二人は、本シリーズを4つのパートからなる写真集にまとめている。まず、軸となるシリーズ名を題した写真集『Me and Me』では、2014年以降に撮影した写真を中心とした37枚が収録されている。2つ目のパートは、それぞれの視点から見たパートナーを綴った写真集2冊『Yanmei Jiang In My Eyes』と『Wenjun Chen In My Eyes』。2007年から撮り続けてきた写真にときにテキストが添えてあり、それぞれの個人として、そして写真家としての成長も見ることができる。3つ目は、2つ目のテキストバージョン。2007年から二人で過ごした8年間について、異なる視点で書かれている。最後は、ソーシャルメディア上にアップした写真を他者から寄せられたコメントとともにレイアウトした、新聞フォーマットを模した一冊。

「もともと本での表現が好きで、2012年にはウェンジュンと共通の友達の3人で出版レーベルを立ち上げています。ですから、『Me and Me』を本の形でまとめるのは自然な流れでした。親密さ、人生、プライベートをテーマにしたシリーズなので、手に取ることのできる本という形でゆっくりと読んでもらいたいと思いました」と、ジャンが写真集としてまとめた理由を話してくれた。チェンは、「真っさらな本に写真やテキストを貼り付けていくと、ときの流れを感じました。最終的に4つのパートにわけたことで、自分の視点、恋人の視点、一緒にお互いの関係を見つめ直す視点、他者が私たちを見る視点など、さまざまなパースペクティブを取り入れることができたこと思っています」という。

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ソーシャルメディアに掲載された写真やコメントを、新聞のようなフォーマットでまとめた。

最後に、現在の中国の写真シーンについての見解を求めてみた。チェンは、「経済成長が後押しとなり、写真シーンは急激に進化を遂げ、世界に開かれていっています。若手作家として、作品を発表するチャンス、写真を通した海外の方々との出会いが増えていると感じています。また、国内外を舞台に献身的にハードワークする、若いアーティスト、キュレーター、評論家も多いです」という。ジャンも「中国の写真シーンのインフラは発達していっていると感じます。チャンスが増えたことで、若手作家たちがよりアクティブに活動していますね。最近は、ギャラリーやインスティチューションも増えてきています」と続ける。シーンと才能がともに成長を遂げている中国から、今後も目が離せない。

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