Whitney Biennial 2017

2017年のホイットニー・ビエンナーレが示した写真の意味とは?

ホイットニー美術館の入り口付近

ホイットニー美術館の入り口付近

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1932年に始まったホイットニー・ビエンナーレはアメリカ美術の「いま」を俯瞰する大規模なグループ展だ。一昨年にダウンタウンの新築ビルに移った関係で3年ぶりに開催された今回は、初の非白人キュレーター2人組が63のアーティストおよび集団を選んだ。発足当初は、絵画あるいは素描と彫刻部門しかなかったが、徐々にジャンルが増え、今回も写真、映像、インスタレーション、テキスト、音楽、インタラクティブなデジタルメディアなど多彩な作品が、おもにビルの2階分に展示されている。

今回、意表をついた立体作品の合間に目立ったのは絵画作品の多さ、そして政治的なメッセージだ。写真に関しては保守的で、昨今の制作過程や見せ方などへの斬新なアプローチは扱われていない。元来、ヨーロッパよりもリアリズムに傾倒しやすいアメリカの写真観を反映しているともいえるだろう。

アン・ミ・レイの展示風景

アン・ミ・レイの展示風景

最も代表的なのがアン・ミ・レイ(1960年〜)がルイジアナ州で撮った7点の風景写真。ベトナム戦争終結の年に家族とともにサイゴンから避難してきたレイは、これまで米軍の訓練現場などの写真で、戦争の意味やその結果がもたらすものを問い続けてきた。昨秋、ベトナム出身者の多いニューオリンズ付近で漁民を撮影するうちに、メキシコからの移民の存在を意識し始めた。奴隷制の痕跡が強く残るこの土地で遭遇した移民たち、経済格差、そうした問題が山積する現場で大統領選挙の結果を知った。その翌日、結果を批判する落書きが描かれた店の写真も撮影した。会場では、この写真に反応する鑑賞者が多い。同州のミシシッピ川沿岸地域での石油化学工場による汚染問題に取り組んだリチャード・ミズラックのごとく、静かな風景の中に強く訴えるものがある。

ジョン・ディヴォラの展示風景

ジョン・ディヴォラの展示風景

廃墟に学生が捨てた素描を貼り付けて撮影したジョン・ディヴォラ(1949年〜)の8点のプリントは、ときには抽象絵画と見間違えそうなものもある作風だ。南カリフォルニアを拠点に、何十年にもわたって家屋や空間を撮ることにこだわってきたこの作家は、廃墟の中に落書きをした作品も撮影している。

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