Interview
Jochen Lempert

写真の常識を軽やかに超える、ヨヘン・レンペルトのしなやかで揺るぎない世界の秘密。

INTERVIEW Jochen Lempert

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―モノクロにこだわる理由を教えてください。ゼラチンシルバープリントのトーンもかなり軽やかですね。

モノクロが物事を抽象化する度合いが好きなんです。このトーンは素材への興味から来ていると思います。より紙の表面の質感が伝わって、これが紙だとわかりやすいトーン。写真はよくマウントされていたり、コート紙を使っていたりして、実際の素材がわからないことが多いですよね。私はシンプルな素材感に魅力を感じるのです。

―いつも同じカメラを使っていますか?

同じ種類(35ミリカメラ)をずっと使っていますが、道具にあまり興味はありません。よく知っていて、考えずに使えるものであることが重要です。

―学術的な作品もあれば、ユーモラスな写真もありますね。そういう視点が一緒になっているのは、意図的なのでしょうか? 例えば「顔相学的試行」では、生き物ではない写真も含まれていますが。

両方の視点が、同等に重要です。「顔相学的試行」では、たくさんの素材から、工業製品の写真を1、2点ずつ選びました。テープレコーダー、掃除機、どれも左右対象ですよね。人間に反応してもらうために、生き物であるかのようにデザインされているのではないでしょうか。偶然選んだというより、生物学的な視点で見ている部分もあると思います。だから、ただ面白いだけではないんです。

―今回の展示は、サイズも時代もさまざまで、壁に直接貼ったりしながら全体でひとつの空間として構成されていますね。

こういう展示を常に行なっています。写真を額装しない理由は、作品同士の関係性が生まれる作用がより強くなるからです。新しい、古いといった住み分けはあまり意識せず、どうすればスペースに合うかを考えながら、展示方法を決めていきます。いつも展示空間に多めに作品を持ち込み、場所に合わせてその中から、最も効果的なセレクトや組み合わせを即興的に見つけていきます。毎回がたった一回きりの、その空間と関連性のある展示が仕上がります。

INTERVIEW Jochen Lempert

Jochen Lempert

被写体が大きいものが大きくプリントされているわけではないですね。視点を変える手法のひとつとして用いているのでしょうか。

サイズはとても重要です。小さい蟻は、展示では大きくプリントされています。サイズの決定には一貫したルールがあるわけではなく、毎回異なります。そうすることで、自然界でのサイズを感じさせるところはあるかもしれません。

フォトグラムの手法を使い、ネガポジ反転させている作品と同様に、視点の転換を起こすためにサイズを意図して変えているのかと思いました。

そうですね。サイズが自由に変えられるのは、写真の本質でもあります。

「クモの巣」の写真と「バルセロナ・パビリオン」の写真の並びでは、蜘蛛と人間の構造を比べたり、森から見た飛行機の写真では、森の視点で飛行機を見ることができました。視点が変わるのが面白かったですし、サイズの使い方によって、自分自身がすごく小さくなったような感覚になったり、その逆もありました。

パーフェクト!そのように受け取っていただけたなら、もうこれ以上話さなくていいね(笑)。私もそう感じます。

《クモの巣》2012/2015年(写真左)《バルセロナ・パビリオン》2007年(写真右)Photo by IZU PHOTO MUSEUMKenji Takahashi

《クモの巣》2012/2015年(写真左)《バルセロナ・パビリオン》2007年(写真右)Photo by Kenji Takahashi

《飛行機と裸子植物の森林》2013年

《飛行機と裸子植物の森林》2013年

All images © Jochen Lempert. Courtesy BQ, Berlin and ProjecteSD, Barcelona

タイトル

「ヨヘン・レンペルト|Fieldwork — せかいをさがしに」

会期

2016年10月28日(金)~2017年4月2日(日)

会場

IZU PHOTO MUSEUM(静岡県)

時間

・10月、2月~3月:10:00~17:00
・11月~1月:10:00~16:30
・4月:10:00~18:00
*入館は閉館30分前まで

休館日

水曜(祝日の場合は営業、その翌日休)、2016年12月26日(月)~2017年1月6日(金)

URL

http://www.izuphoto-museum.jp/exhibition/217877468.html

ヨヘン・レンペルト
1958年ドイツ、メールス生まれ。1970年代後半からおよそ10年間にわたり、アート集団「シュメルツダヒン(Schmelzdahin)」の一員として、映像制作・パフォーマンスを行い、写真を用いた制作活動は1990年代前半より始める。並行して1980年よりボン大学にて生物学を学び、10年以上にわたり研究活動を行うなど自然科学に精通する。現在は、ドイツ・ハンブルクを拠点に活動。近年は、バンクーバー現代美術館(カナダ、2016)、シンシナティ美術館(米国、2015)、ハンブルク市立美術館(ドイツ、2013)、ルードヴィヒ美術館(ドイツ、2010)ほか世界各地で個展を開催している。

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