Interview
Juergen Teller

絶対的な被写体との出会いによって進化し続ける、ユルゲン・テラーの新境地を追う

Interview Juergen Teller

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25年ぶりの日本での個展が、BLUM & POE 東京で開催されているユルゲン・テラー。「テラー ガ カエル」と題された本展のキュレーションは、第50回ヴェネチア・ビエンナーレの総合ディレクターを務めたフランチェスコ・ボナミが手がけた。皿の上のカエルをモチーフにした新作シリーズのほか、写真家のウィリアム・エグルストン、女優のシャーロット・ランプリング、そしてテラー自身のセルフポートレイトの写真で構成されている。テラーにとっての絶対的な存在を結束させた本展は、「テラー」と「カエル」このふたつのキーワードが肝となっている。輝かしいキャリアを持ちながら、常に自身を変容と進化に晒し、それを自分自身が楽しむ――挑戦的な写真家、テラーが見つけた被写体の新境地とは―。

インタビュー・文=アイヴァン・ヴァルタニアン
写真=高木康行

―まずは展覧会のタイトルについて話しましょうか。「テラー ガ カエル」というタイトルには、複数の意味が込められてていますね。

ユルゲン・テラー(以下”テラー”):いいでしょう!

―さまざまな読み解き方が可能です。カエルの写真が隣にあると、テラー自身がカエルであるという意味にもなります。テラーがカエル、帰る、返る、換える、買える……。漢字を使用しないことで、どの「カエル」を指しているかを、わざと曖昧にしてありますね。ずるいぐらいに上手いですね。

フランチェスコ・ボナミ(以下“ボナミ”):そのどれも当てはまると思います。カエルはユルゲンにとって、とても象徴的な生き物。ユルゲンは作品制作のために、いつも自分の原点に立ち戻って、自分のスタイルを変容してきている。日本文化でカエルがどう扱われているかをリサーチしているときに、たまたま、現在の「〇〇がかえる」という言葉を見つけ、この展示にぴったりだと思い採用しました。

テラー:実は、このタイトルには、もうひとつの意味も含まれています。テラーという私の苗字は、ドイツ語で「お皿」の意味を持っているんです。

―ワオ!

ユルゲン・テラー「Frogs and Plates No.8」

ユルゲン・テラー「Frogs and Plates No.8」2016年 Framed giclee print, 20.3 x 25.4cm
Courtesy of the artist and Blum & Poe, Los Angeles/New York/Tokyo

テラー:この展覧会はまるごと私のセルフポートレイトでもあるのです。きっかけは、旧西ドイツの首都ボンのクンストハーレ(美術館)で個展を開催したことです。国が全ての費用を出してくれるとても大規模な企画で、何を見せればいいか、かなり悩みました。最初にタイトルを考えたのですが、最終的に「Mit Teller von Bonner(お皿を持ってボンへ、もしくはテラーと一緒にボンへ)」と付け、実際にたくさんのお皿を使って写真を撮りました。そのお皿(Teller)は、自分自身の身代わりでもあり、コンセプトとして初めて作用させたのです。

例えば、直径1.2m~1.8mもある巨大なお皿を発注して自分の写真を転写し、それを人に持たせたり。お皿を小道具として利用し、写真の中で演出していくのです。女優シャーロット・ランプリングにルーヴル美術館でお皿を持ってもらって、写真を撮ったりね。

Interview Juergen Teller

「Mit Teller von Bonner」の展覧会カタログを開いて。

お皿のアイデアが閃いてから、その後も積極的に被写体として使っていきました。ある日、イギリスのAlison Jacques Galleryからロバート・メイプルソープ展のキュレーションを頼まれたことがあって、彼の作品を半年間かけてリサーチしました。ニューヨークにある財団を訪ねてアーカイブを見せてもらったら、オリジナルプリントとポラの両方で、メイプルソープはお皿をよく撮っていたんです。とても驚きました。黒い背景の前で、積み重ねたお皿を男性と一緒に写した写真を見た時、「しまった!」と思ったんです。メイプルソープがすでにお皿を完璧に撮っていたからね(笑)。でもどうしてあのような写真を撮ったかは、いまだに謎です。

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