Interview
Yoshiyuki Okuyama

点と点のあいだを狙う 奥山由之写真展「君の住む街」インタヴュー

Interview Yoshiyuki Okuyama

PREVIOUS PAGE 1 2 3

―写真集に東京の風景を入れるのは奥山さんのアイデアですか?

はい。写真集にする際は、被写体の方々に興味があって手にとった人にも、状況を含めて人物を見せる写真なのだと気付いてもらえて、そこから“写真”そのものにも興味を持ってもらえたら嬉しいなと。被写体の方々を撮ったそれぞれの街と街の間を歩き回り、撮影しました。今回改めて“何かと何かのあいだ”が好きだということに気がつきましたね。過去に出版した『BACON ICE CREAM』という写真集のタイトルはその意思表示だったのですが、甘さと辛さや、厳しさと暖かさ、緩さと固さなど、相反する要素を瞬間的にかつ同時に感じさせる人や物事がすごく好きなんです。だから、できる限り距離が遠いところにあるもののあいだをよく見ることが、僕にとってはずっと大事なテーマだと思います。

―「あいだを撮る」ということについてもう少し聞かせてもらえますか。

人の“感情”における中間、時代や時間つまり“尺”における中間、“場所”における中間、すべてにいえますね。例えば人の感情はずっと流動していて、その流動こそが人間らしさであると思います。ある一定の感情であり続けることなど無いですよね。だからこそ何か心に残るな、と思う「何か」は点ではないんです。点と点のあいだの線こそが人間らしくて、心に響くのでは、と。本当に人に訴える力のある表現というのは、その浮き沈みしている線のあいだを抽出して、出来る限り“生”でこちらに差し出してくるものなのでは、と思っています。

―ポラロイドで撮ったのはどのようなきっかけでしょうか?

画角のことだけでいえば一般的に写真は長方形で、正方形というサイズ感はあまり馴染みが無かったかと思います。あくまでトリミングをされている、という見え方であって、そこには意図を感じるものでした。それがいまやInstagramの登場によって多くの人にとって正方形が見慣れたものになり、ある種“いま”の気分を表す画角じゃないのかな、と思います。それをポラロイドという過去の質感で撮ることで、昔でもいまでもない“間”を突けたのかもしれないと、あとから見返してそう思いました。それは東京の街に感じる時間的な“間”の歪みを撮りたいという最初の意図とも不思議と合致しています。

Interview Yoshiyuki Okuyama

―もともと東京という街自体は、奥山さんにとって重要なテーマなのでしょうか?

このシリーズで少し考えるようにはなりましたが、数年後にまとめようと思っている写真集ではまさに“東京”をどうとらえるかについて取り組んでいます。僕にとって、生まれ育った街に照準を当てることは、写真人生の中でもポイントになるかと思います。

―今回の写真集の構成はどのように決めていかれたのでしょうか。

人物に関しては、連載の登場順とは異なり、流れのバランスも見て構成し直しました。一冊の中にこれだけ複数の主人公が登場する写真集は初めて作るので、少し難しかったです。僕自身は変わらないスタンスで撮っていても、被写体の方々にはそれぞれ違う反応があるので、こうしてまとめて見るとある種の定点観測というか、同じ地点から見たそれぞれ、ということで、各々の個性が浮かび上がって見えました。写真集になるとは思っていなかった写真をまとめることで、多くの発見がありましたね。

―写真集になることでさらに意味を見出せた作品だったと。

はい。写真集の構成をもとに、展覧会も構成していきました。いままでの個展のように作品のサイズ感や配置、プリントの質感、額装の仕方で各写真に意味合いを持たせる、という手法は今回には向いていないと思い、フォーマットは変えず、均一にすることで個性を浮き彫りにすることにチャレンジしました。写真展は写真家が空間をコントロールできる貴重な場なのでとても思い入れがあるのですが、今回はあえて僕自身の感情や意図をドライにすることで、被写体の方から出てくるものを見せたいという試みです。この写真集は僕の写真を見たことがない人にも、ぜひ手に取ってもらいたいですね。女性を撮る、ということにおいては「かわいい」と「かわいらしさ」に違いがある、といったところに目が行くと面白い内容だと思います。単純に距離を詰めればその人らしさや可愛さに迫れるわけではありません。その状況や時代背景をも含めて、人には“らしさ”が宿る気がします。この写真集でそこまで壮大なものをとらえられているかはわからないですが、ぜひ35人の「かわいらしさ」を見ていただけると。そして、僕の写真を見ていただいたことで、人や物事を見る視点にもし何か変化があるとしたら、とても夢のある話だと思います。

interview-20170428yoshiyuki-okuyama_13

タイトル

「君の住む街」

会期

2017年4月27日(木)~5月7日(日)

会場

表参道ヒルズ 本館B3F スペース オー(東京都)

時間

11:00~21:00(4月30日は20:00まで/最終日は18:00まで)

URL

http://www.omotesandohills.com/event/#902

奥山由之|Yoshiyuki Okuyama
写真家・映像作家。1991年生まれ。広告、CDジャケット、雑誌、カタログのほか、映画、MVなどの映像作品も手がける。主な写真集に『BACON ICE CREAM』『Girl』『THE NEW STORY』など。第34 回写真新世紀優秀賞受賞。第47回講談社出版文化賞受賞。

PREVIOUS PAGE 1 2 3