Photobooks: Evolving by Rebirth

復刻によって蘇る写真集 vol.1
復刻によって写真集マーケットをさらに拡張する マイケル・マック インタビュー

『TRANSPARENCY IS THE NEW MYSTERY』細倉真弓(MACK、2016)

『TRANSPARENCY IS THE NEW MYSTERY』細倉真弓(MACK、2016)

また復刻で重要な要素のひとつに、技術面でのアップデートがある。作家、もしくは財団との関係を大切にするマックは、存命作家の作品集の場合は本人と、故人の場合は財団とガッチリと手を組んで復刻に取り組む。その過程でオリジナルプリントやネガを通して改めて作品を見つめ、再スキャンなどのプロセスを経てイメージに新しい命を吹き込む。「昔は印刷コストが高かったし、特に自費出版の場合、経済的な事情でベストな印刷手段が選ばれていないこともあります。適正なコストと現在の技術をもってすれば、この先も長く読まれる質の高い写真集が作れるのです」。『Kodachrome』のあと、写真集に限らず、例えばアラン・セクーラの名著『Photography against the Grain』なども相次いで刊行。この本はオリジナルが80年代にアメリカで刊行された後、長く絶版になっていたにもかかわらず、アメリカで写真を学ぶ学生の必読書として知られており、コピーが出回っている状態だった。「そのように読み継がれる、写真史にとって重要な一冊を復刊させないという選択肢はないですよね」。また、ギッリのエッセイ集も復刻しているが、こちらは来年、日本語版をMACKから刊行予定だという。写真集だけではなくアートブックやテキストブックも、それが美術史にとって重要な本であると判断すれば、刊行をためらわないと熱く語る。

『Photography against the Grain』アラン・セクーラ(MACK、2016)

『Photography against the Grain』アラン・セクーラ(MACK、2016)

『Photography against the Grain』アラン・セクーラ(MACK、2016)

『Photography against the Grain』アラン・セクーラ(MACK、2016)

『Photography against the Grain』アラン・セクーラ(MACK、2016)

将来的に出版したい本のリストは膨大かと尋ねると、「そういうわけではないんです。日本や特定の国の作家に集中しようと思っているわけでもないし、刊行リストをガッチリ決めているわけではない。復刻写真集と、すでにキャリアのある現代作家と、例えば細倉真弓のように、まだ欧米ではあまり知られていない作家の写真集をバランス良く出していこうとは思っています。世界各国に流通しているので、うちで本を出すと過去の本でも必ずどこかで誰かの目に止まります。だからよく作家からも、良い宣伝になるといわれますね(笑)」。MACKのもうひとつの特徴はその流通力。現代写真という専門性をニッチなものにせず、高いマーケティング力でより多くの人に届けるという明確なビジョンが、復刻写真集をレアなお宝ではなく、公共性の高い文化的財産に昇華させている。

『TRANSPARENCY IS THE NEW MYSTERY』細倉真弓(MACK、2016)

『TRANSPARENCY IS THE NEW MYSTERY』細倉真弓(MACK、2016)

『TRANSPARENCY IS THE NEW MYSTERY』細倉真弓(MACK、2016)

『TRANSPARENCY IS THE NEW MYSTERY』細倉真弓(MACK、2016)

『TRANSPARENCY IS THE NEW MYSTERY』細倉真弓(MACK、2016)

どんな作家も、いつかはここから出したいと夢見る出版社にまで成長したMACK。しかし「あくまで民主的に」と繰り返し口にする、リラックスし、自信に満ちあふれたマックの語る展望を聞いていると、やみくもに手を広げて、いわゆるマスアート出版社を作ろうという意図などみじんも感じられない。エッジの効いた作家のみずみずしい作品と、誰もが知る巨匠陣の新しい挑戦、そして多くの人が初めて目にする名作写真集の復刻。バランスを驚くほど巧妙にとりながら波乗りを楽しむ姿に、ますます他の追随を許さぬ出版社の本質を見た。