Photobooks: Evolving by Rebirth

復刻によって蘇る写真集 vol.1
復刻によって写真集マーケットをさらに拡張する マイケル・マック インタビュー

『Sleeping by the Mississippi』Alec Soth(MACK、2017)

『Sleeping by the Mississippi』Alec Soth(MACK、2017)

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MACKから刊行された近刊の復刻写真集を紹介

『Sleeping by the Mississippi』
Alec Soth(MACK、2017)

2004年に初版が刊行された際、当時Steidlにいたマックが担当した名作写真集。ミシシッピ川沿いのロードトリップを中心に、アメリカのアイコニックでありながらも忘れ去られた「サードコースト(第3の海岸)」をとらえた本作により、ソスは一躍スターダムを駆け上がり、現在では現代写真を代表する作家に。その後、第3版までは毎回異なる表紙で同社から出版されたが、今回はソス一番のお気に入りという初版本の表紙を踏襲している。最初と最後に、2点の未発表作品が加わっている。現存する作家の初期写真集を復刻という珍しいパターンだが、ソスとは二人三脚での制作過程だったと振り返る。故人の場合は正解は手探りのため最後まで不安が残るが、今回は作家と出版社双方納得がいくまで詰められたと語る。

『鴉 Ravens』
深瀬昌久(MACK、2017)

自身の「民主主義的アプローチ」の代表的な例として挙げた、この一冊。「驚異的な名作」とマックが手放しで称賛する深瀬の『鴉』は、初版が高価格で取引され、実物を見たことがある人はほとんどいないという、もはや伝説化した存在だった。鴉をまるで深瀬自身の化身のように撮り続けた狂気的なまでの写真家のまなざしと、その孤独が淡々としたレイアウトから立ち現れてくる。今回は深瀬昌久アーカイブスの協力を得て新装版を刊行。同アーカイブのトモ・コスガのテキストが新たに加えられたほか、デザインは初版を踏襲している。またMACKの出版物の中でも最も印刷部数が多いタイトルのひとつとなっているのは、絶版による価格高騰を避けるため。「すべての人が見るべき名作だと思うから」と、最も成功した写真集出版社であるMACKならではの決断だ。昨年は深瀬の『HIBI』を刊行したが、今回の『鴉』刊行によって、深瀬作品をさらに広く世界へと羽ばたかせている。

『Pictures From Home』
Larry Sultan(MACK、2016)

ラリー・サルタンが自身の両親を実家で撮影したポートレイトと、両親へのインタヴューの引用で構成されているパーソナルな一冊。ドキュメンタリーとステージドフォトグラフィーの間をたゆたい、写真集の中でひとつの家族の物語が浮かび上がってくる。家族写真の金字塔ともいえる名作だが、トリミングやデザインなどが古めかしく感じられたため、今回の新版では編集とレイアウトを大幅に変更している。本文フォントは元の持ち味を生かしつつ現代的にアップデートし、ページ数も127ページから196ページへと大幅に増やされた。サルタンの財団でオリジナルのフィルムとじっくり向き合い、元の構図が良いものはトリミングしないなど、1ページごとに丹念に再編集されている再スキャンにより色も鮮やかに蘇り、全く新しい一冊へと生まれ変わった。「サルタンの写真の素晴らしさが、より明確になった」。

Michael Mack

© Torbjørn Rødland, Courtesy of Mack Books

マイケル・マック|Michael Mack

ロンドンを拠点とする出版社MACK代表。ドイツの出版社Steidlで、約15年間にわたって写真集部門のディレクターを務めたのち、2011年独立。著名・若手問わず明確なヴィジョンをもつアーティストや作家、キュレーターと共に編集・制作されるハイクオリティかつ美しい写真集は、毎年数々の賞を受賞し、国際的に高く評価されている。

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