Interview
Oliver Chanarin

オリバー・チャナリンインタビュー
ニュースもアートも“エンターテインメント”─複雑な世界を紐解くためのユーモア

AREA

神奈川県

ブルームバーグ&チャナリン「痕跡証拠」展示風景。
ブルームバーグ&チャナリン「痕跡証拠」展示風景。

PREVIOUS PAGE 1 2 3

複雑な世界を知るためのエンターテインメント

オリバーが説くような作品へのコミットメントや、自分がいま観ているものの外側を想像することは確かに重要だ。しかし、一方では、現代の日本で暮らすわたしたちにとって、ヨーロッパ諸国が直面している移民問題や中東の紛争を肌感覚で理解することが困難を孕んでいることも事実だろう。

ブルームバーグ&チャナリンの諸作品は、日本で暮らすわたしたちにとってこうした問題について考える最初のきっかけにもなりえるものかもしれない。オリバーは自身の作品に潜む「ユーモア」こそが、こうした問題にとっては有効なのだと語る。

「戦場に赴いて、何も写っていない写真を撮ってくるなんてジョークですよね(笑)。悪いジョークのようで、ダダの作品みたいでもあります。これらの作品は不条理やバカバカしさが内包されていて、そんなにシリアスなものではないんですよ。だから、キューブがたくさん置かれているんです。遊ぶことは考えることで、考えることは遊ぶこと。ときにわたしたちは物事を真剣に考えすぎてしまいますが、生きていく上ではユーモアこそ有効な手段なのです」

オリバー・チャナリン

所在なげに積まれたキューブがテロのシーンを表している、などと言われると、ついこちらも身構えてしまうが、それが一種の「遊び」なのだと知ればよりリラックスして物事を考えられるようになる。特に他者の「痛み」について考えるときは、ユーモアを介在させることが思わぬ効果を生むこともあるだろう。

「街なかで転んでいる人を見たら助けるべきですが、チャーリー・チャップリンが転んでいるのを見たら笑ってしまいますよね。笑いは他者の痛みを見た際の最も自然な反応となることもあります。だから、人間の苦しみを理解する上で、ユーモアは非常に興味深いツールなんです」

シリアスな問題をユーモアによって考えることを不謹慎だとする人もいるかもしれないが、オリバーにとっては、そもそもニュースもアートも「エンターテインメント」なのだ。それゆえ、そもそも作品が重要な政治・社会問題を完璧に扱うことなどできやしない。しかし、オリバーによれば、完璧に扱うことができないからこそ彼らの作品は意味をもつのだという。

「ニュースもアートもエンターテインメントなんです。だから、政治・社会的な重大問題を扱おうとすると失敗してしまう。ならば、それが失敗だと認めてしまえばいい。いわば、これらは失敗についての作品なのです。写真を見ているとき、実際に見ているものと頭の中で見ているものの間にはギャップがあります。いい写真にはそのギャップが残されています。頭の中のイメージと写真の間に余白があるんです」

わたしたちは作品のタイトルや作家のインタビュー、他者との対話を通じてその余白を埋めようとする。一方で、昨今SNSで急速に流通するイメージはどこか恣意的で余白がほとんど残されていないものだ。いわば、SNSは複雑な世界をどんどん単純化してゆく。オリバーはそれを危険で「貧しい」ことだと語った。

世界とは、単純なものではない。ブルームバーグ&チャナリンの作品の豊かさとはこの世界の複雑さであり、単純化していく現代社会への痛烈なカウンターでもあるのだ。

*作品写真はすべて「ヨコハマトリエンナーレ2017」展示風景

タイトル

ヨコハマトリエンナーレ2017「島と星座とガラパゴス」

会期

2017年8月4日(金)~11月5日(日)

会場

横浜美術館/横浜赤レンガ倉庫1号館/横浜市開港記念会館地下ほか

時間

10:00~18:00
*10月27日(金)~10月29日(日)、11月2日(木)~11月4日(土)は20:30まで開場/最終入場は閉場の30分前まで

休場日

第2、4木曜

URL

http://www.yokohamatriennale.jp/

PREVIOUS PAGE 1 2 3