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Takashi Homma × Noguchi Rika

対談 ホンマタカシ×野口里佳
時代に逆行し普遍性を生む削ぎ落としの美学

AREA

東京都

対談 ホンマタカシ×野口里佳

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削ぎ落とすことが普遍性を生む

ホンマ:野口的な、削っていく美学が新作の「海底」にもあるよね。

野口:ものすごく点数の多い作品とか、自分から離れたところには行ってみたいんですけどね。毎回チャレンジはしているんですが、結局はそうなっていかないんですよ。

ホンマ:でも、作家として成長して変化していかなければいけない一方で、周りの環境も変わる。『創造の記録』の作品もいま見ると異質に感じられたりするし。だから、沖縄に住んだというのも流石だなと思った。こっちは東京生まれ東京育ちだから。東京を経由せずに制作できるのは羨ましいね。

『創造の記録』野口里佳

「創造の記録 #29」1993-1996年 Cプリント © Noguchi Rika(『創造の記録』収録)

野口:私はいろいろなところに住んできたので、なかなか自分の中で自分が全部繋がらないんですよ。だから歴史が一本に繋がっている感覚には絶対たどり着けない。

ホンマ:ただ、いろいろなところに住んでいるのに、作品のトーンが変わらないというのは面白いね(笑)。

野口:そうですね。こんなに移動しているのにどうしてなんだろう……(笑)。

ホンマ:それは「削る」ことと関係していると思う。しかも野口の場合はそれが作品を通じて宇宙や普遍性に繋がっていくのが面白い。今回の写真も本当に月面みたい。この前初めて意識的に何度か茶室に入ったんだけど、何も設えがないほど宇宙に近づいていくんだよね。禅もそうだけど、削っていく作業の方が宇宙に近づいていく。要素を増やしていくと俗になってしまうから。日本人はもともと「間」みたいな概念をもっていたのに、最近はゴチャゴチャ煩雑になってきているよね。

野口:茶室の話は確かにそうですね。ただ、いまは沖縄に住んでいるので、逆に有機的なものを楽しんでいます。私自身は変わろうとしてるんですけどね。

野口里佳「海底」展示風景 タカ・イシイギャラリー東京

野口里佳「海底」展示風景 タカ・イシイギャラリー東京 2017 年9月9日-10月7日 Courtesy of Taka Ishii Gallery Tokyo / Photo: Kenji Takahashi

ホンマ:変わらないものなんてないからね。野口は俺から見ると不器用な撮り方をしてると思うけど、それが味になっているのがいい。単に写真が上手い人はもっとたくさんいると思うけど。そこが表現のひとつの秘密だと思う。

野口:上手い人の苦労がわからないんですよ。上手いからわざと外して偶然を呼び込むとか、なるほどそんな苦労もあるのかと思います。私なんて、いつもどうすればこのカメラを使いこなせるようになるのか、ということが課題なので。

ホンマ:でも、上手い写真は大抵つまらないよね。今回の写真も、きっと1枚撮るのに何週間もかけて、数値だけ見ればもっとクオリティの高いプリントをつくる写真家はいると思う。でも、アートの価値は逆。一生懸命手間暇かけて上手くいったというのは、工芸品だったらいいけど、アートにおいては価値にならないから。そういうことを最初から掴んでいたというのが野口の最大の強みなんだと思う(笑)。ただ、野口が面白いのは、上手い写真にも興味があることだね。

野口:もちろん興味はありますよ!「上手くて困る」って一回いってみたいです。私はいつもいい写真を撮ろうと思って精一杯ですから……。

ホンマ:「精一杯削ぎ落としてる」ほうが高級だよ(笑)でも、いまはモノが溢れている時代だし、これからは絶対にその方がいいよ。

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▼展覧会
タイトル

「海底」

会期

2017年9月9日(土)〜10月7日(土)

会場

タカ・イシイギャラリー(東京都)

時間

11:00~19:00

休館日

日月曜、祝祭日

URL

http://www.takaishiigallery.com/jp/archives/17059/

▼写真集
タイトル

『創造の記録』

出版社

roshin books

価格

5,000円+tax

発行年

2017年

仕様

ハードカバー/231mm×276mm/80ページ

URL

http://roshinbooks.com/record.html

野口里佳|Noguchi Rika
1971年大宮市(現さいたま市)生まれ。1994年に日本大学芸術学部写真学科を卒業、12年間のベルリン滞在を経て現在沖縄を拠点に活動。主な個展として、「光は未来に届く」IZU PHOTO MUSEUM(静岡、2011年)、「太陽」モンギン・アートセンター(ソウル、2007年)、「星の色」DAADギャラリー(ベルリン、2006年)、「彼等 野口里佳」アイコンギャラリー(バーミンガム、2004年)、「飛ぶ夢を見た 野口里佳」原美術館(東京、2004年)などが挙げられる。野口は2018年3月に開催される第21回シドニー・ビエンナーレに参加予定。

ホンマタカシ|Takashi Homma
1962年、東京都生まれ。1999年に『東京郊外』で第24回木村伊兵衛賞受賞。2011~12年、金沢21世紀美術館など国内3カ所の美術館を巡回した大規模個展「ニュー・ドキュメンタリー」展を開催。現在、東京造形大学大学院客員教授。2016年に、イギリスの出版社MACKより、カメラオブスキュラシリーズの作品集『THE NARCISSISTIC CITY』を刊行した。

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