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Tomo Kosuga × Ryuichi Kaneko

鴉の秘密 アーカイブスの謎【後編】

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東京都

深瀬昌久写真展「烏」展示風景

深瀬昌久写真展「烏」展示風景。ニコンサロン銀座にて1976年10月5日〜10日まで開催された。

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コスガ:話を「鴉」に戻しましょう。鴉をテーマにした展示は76年から82にかけて4度、ニコンサロン銀座を舞台に「烏」「鴉 1979」「烏、東京篇、1981」「烏・終章」といった題名で発表されました。初回は北海道への逃避行の旅を、そして第2回では妻の故郷にあたる金沢での写真が混ざり込んでいます。ここまでは妻との離別が大きな要因になっていることがこれまでの経緯でご理解頂けたと思いますが、興味深いのは81年の「烏、東京篇、1981」です。

金子:これは当時実際に見て、ものすごく印象深い展示でした。

コスガ:よくよく眺めていると気づくのですが、肝心のカラスがあまり登場しなくなり、その代わりに不思議なアングルで切り取られたスナップ写真が割合を占めている。アングルはふわっと浮遊していて、かつ平衡感覚が人とは異なるような。そんな印象を受けながら考えていて、ある日気づいたんです。これは深瀬自身がカラスの眼になって写したものなんじゃないかと。フレームに収まらないクローズアップされた一場面というのは、まさしくカラスが宙を舞う最中に見ているような視点のように感じられませんか?

深瀬昌久写真展「烏、東京篇、1981」展示風景

深瀬昌久写真展「烏、東京篇、1981」展示風景。ニコンサロン銀座にて1981年6月30日〜7月5日まで開催された。

金子:何でこれが「鴉」なんだ?という疑問が浮かぶのですが、見終わった時には「そうかこれが『鴉』なんだ!」と思わせる展示で、とても印象深かった。深瀬さんにとってはカラスも人間もゴミも一緒になってしまったんですね。それが東京だから撮れたということもあると思います。

深瀬昌久写真展「烏、東京篇、1981」展示風景

深瀬昌久写真展「烏、東京篇、1981」展示風景。

コスガ:たしかに東京は大事な要素だったと思います。本シリーズの撮影場所を振り返っても興味深い。一回目が北海道で、日本の最北ですよね。それが二回目では金沢に南下し、3回目で自身のねぐらである東京に帰ってくる。初めこそ非日常のなかでカラスを追っていたのに、自分自身がカラスだと気づいたのか、いつの間にか日常のある東京でカラスの視点を身につけてしまった。

深瀬昌久写真展「烏、東京篇、1981」展示風景

深瀬昌久写真展「烏、東京篇、1981」展示風景。

金子:そうだと思います。被写体としてのカラスが特別な意味を持ち、それを人やものに投影していく感じが、「烏、東京篇、1981」から一気になくなった。深瀬さんがカラスになって、カラスが撮った写真だから鴉だ、という感覚が深瀬さんにもあって、その転換点が「烏、東京篇、1981」だったのだろうと思います。

コスガ:今回のMACKからの復刻版に関しては、そもそもの蒼穹舎版『鴉』を手に取ることのできない人が圧倒的に多かったので、いま勢いのある出版社と手を組み、文字通り世界中の人々に『鴉』を手に取ってもらい、どんなものであったかを知ってもらうことが目標としてありました。次に目標としたいのは、本写真集に収められていない、深瀬が展示と雑誌で描いて見せたことをまとめた“もうひとつ『鴉』”を世に伝えることです。そういった意味で『鴉』計画はまだ終わっていないのです。

タイトル

『鴉 / RAVENS』

出版社

MACK

価格

10,000円+tax

発行年

2017年

仕様

スリップケース入りハードカバー/263mm×263mm/136ページ

URL

https://twelve-books.com/products/ravens-by-masahisa-fukase

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