Interview
Roger Ballen

人間の本性に向き合う写真、無意識へ訴えかけるメタファー
ロジャー・バレン展「BALLENESQUE(バレネスク)」インタヴュー

AREA

東京都

Roger Ballen

モノクロは現実をより一層写すメディア

―南アフリカを拠点にしてから最初の作品集『Dorps / 田舎町』(1986)、そして『Platteland / 田舎の地』(1994)では、ポートレイトを中心に郊外の暮らしをストレートに写したドキュメンタリー的なスタイルです。

当時は南アフリカで人間が住んでいる環境に関心がありました。差別されていたり隔離させられていたりする人、社会の周縁に追いやられている人たちが置かれている住環境や生活に一番の興味があったんです。

―当時はまだアパルトヘイトの時代ですが、そういったジャーナリスト的な関心もあったんでしょうか。

政治的な関心はありませんでした。アパルトヘイトがあったのは確かですが、その後に黒人の社会になって現在人々の生活が豊かになったかというと決してそうではありません。私はさまざまな問題が起きるのは、システムの問題ではなく人間性の問題だと考えています。それと、アパルトヘイトが全体主義や共産主義の国と違うところは、表現の自由があったことです。当然黒人たちと自由に話すこともできたし、写真を撮るうえでの活動が制限されることはまったくありませんでした。

―『Dorps』以降は、一貫して正方形でモノクロのフォーマットを採用していますが、それはあなたが表現したいものと合致していたからですか?

地質学の博士号を取得したときに、ローライフレックスを自分にご褒美として買ったんです。それ以来、数少ない例外を除いてほとんどローライの6×6フォーマットで撮っています。そして私がモノクロが好きなのは、カラーと比べて現実をより写すことができるメディアだと思うからです。ミニマリスティックで抽象的なところもあり、モノクロ自体がひとつのアートフォームになっていると思います。

Platteland Dresie and Casie, Twins, Western Transvaal,1993 Gelatin Silver Print © Roger Ballen Courtesy of EMON Photo Gallery

Shadow Chamber Prowling, 2001 Gelatin Silver Print © Roger Ballen Courtesy of EMON Photo Gallery

Asylum of the birds Relinquished, 2010 Hahnemuhle Pigment Print © Roger Ballen Courtesy of EMON Photo Gallery

―あなたが世界で広く知られるきかっけとなった『Outland / 外地』(2001)は、イメージがより鮮烈になり、その後の『Shadow Chamber 影の牢獄』(2005)や『Boarding House / 寄宿舎』(2009)になると、不穏さが強調され、夢とも現実ともつかない独特の世界が生み出されています。

『Outland』のシリーズは、私がドキュメンタリー作家ではなくアーティストとしての意識で作った最初の作品です。ここでのテーマは人間の「狂気」。私は人生には本質的には意味が無く、コントロールすることもできないと考えています。実際、自分がなぜ存在しているのか、何のために生まれてきたのかというのは根源的には誰もわからない。そういったことをテーマにしています。

―これらのイメージは被写体となっている人物たちとのコラボレーションというか、作品のコンセプトなどを共有して制作しているのでしょうか?

いや、共同作業ではあるけれど、ただ彼らと単に友人になって撮るだけです。コンセプトを説明はしません。一枚の写真というのは意味や言葉で集約されるようなものではなく、感じるもの、見る者の脳を貫通していくものです。言葉で説明できる写真なんて良い写真じゃないでしょう?