Interview
Roger Ballen

人間の本性に向き合う写真、無意識へ訴えかけるメタファー
ロジャー・バレン展「BALLENESQUE(バレネスク)」インタヴュー

Roger Ballen

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「瞬間」をとらえることがアートとしての写真

―壁の落書きや針金といったモチーフや、動物もこの頃から頻出します。中でも鳥とネズミはあなたに取って特別な存在とのことですが。

2000年頃からそういったものを入れるようになってきました。この落書きは自分で描いたものではなくて、YouTubeで1億回以上再生されてる「フリーキービデオ」(南アフリカのヒップホップグループ・Die Antwoordのミュージックビデオ“I FINK U FREEKY”)を撮ったときに描かれたものです。鳥は「天」を、ネズミは「地」を象徴しています。ドキュメンタリーやポートレイトでは人間が中心だったのが、次第にドローイングや彫刻といったさまざまなメディアを写真を通してひとつにまとめ上げるという方向になっていきました。

ロジャー・バレン

―そういったさまざまな要素はセットアップされているようで、動物や人間が同時に入り込むことで、やはり瞬間をとらえていますね。そこが非常に写真的だと感じます。

その指摘は重要ですね。やはり写真というのは瞬間をとらえるものであって、例えばこの作品もネズミがいなければどこかのアーティストが作り込んで同じようなものができるかもしれないけど、そこに写真によって「瞬間」を取り込んでいることがアートたらしめてると思っています。実際に、自分のイメージ通りに撮影するということは、イマジネーションの上でもスキルにおいても非常に高度なものがあるんです。

Outland Puppy Between Feet,1999 Gelatin Silver Print © Roger Ballen Courtesy of EMON Photo Gallery

Asylum of the Birds Homage , 2011 Hahnemuhle Pigment Print © Roger Ballen Courtesy of EMON Photo Gallery

写真集にサインをするときはかならず、鳥かネズミの絵を描くという。

写真集にサインをするときはかならず、鳥かネズミの絵を描くという。

―そこにひと目でロジャー・バレンの作品だとわかるオリジナリティがありますね。

複雑さというのは必ず作品にあるべきで、複数の要素をそれぞれが阻害することなくひとつの作品として成立させ、自分なりの意味も付加しています。こういったロジャー・バレンならではの作品の特徴を、写真集のタイトルにもなっている「BALLENESQUE」(バレン的)と称しているんです。あなたがこれらの写真を見たときに良いと思ったとすれば、そこに何かしら共感したり心地よく思うものがあるからです。言葉で説明はできないけど、イメージがずっと心に残って頭から離れなくなる。アートにおいてはそういうことが非常に重要です。

The Theatre of Apparitions Replacement , 2010 Hahnemuhle Pigment Print © Roger Ballen Courtesy of EMON Photo Gallery

The Theatre of Apparitions Stare, 2008 Hahnemuhle Pigment Print © Roger Ballen Courtesy of EMON Photo Gallery

会場風景

―あなたの作品の場合には、それは心地良いというより不気味で怖いものです。むしろ一般的に「美しい」と言われてるものとは対極にあるといってもいいけれど、もっと見たくなったり惹かれてしまうというのは、やはり人間の本質的な部分とどこか共鳴するものがあるのでしょうか。

そうですね。多くの人々というのは抑圧された状態で日常生活を送っていて、それを普段は正面から見ないようにしています。私の作品を見て怖いと思うのは、作品を見ることで自分たちの環境に立ち返って、部分的にでも抑圧されたところがあるということを受け容れる、もしくは理解するというプロセスが起こるからではないでしょうか。アート作品は、ビジュアルとして審美的に調和がなされていることがまず重要ですが、さらに人間の無意識に訴えかけるメタファーがないと成立しないと思っています。そういう意味では世の中の人にとって良い薬でもあります(笑)。

ヨハネスブルグから同行した友人と時差ボケのライオン

展覧会の会場外に展示したユーモアに溢れたインスタレーションと笑顔で記念撮影。バレン氏曰く「ヨハネスブルグから同行した友人と時差ボケのライオン」。

参考書籍:『Ballenesque, Roger Ballen: A Retrospective』(Thames & Hudson)

タイトル

「BALLENESQUE(バレネスク)」

会期

2017年10月20日(金)〜12月20日(土)

会場

EMON PHOTO GALLERY(東京都)

時間

11:00〜19:00(土曜は18:00まで)

休館日

日・祝休

URL

https://www.emoninc.com/2017exhibition-roger-ballen

ロジャー・バレン|Roger Ballen
1950年米、ニューヨーク生まれの写真家。現在南アフリカ在住。21世紀で最も重要な写真家の一人として知られ、35年以上に渡ってヨハネスブルクに住み制作をしている。バレン独特の写真表現は正方形のフォーマットとモノクロームの美しい階調をもって進化を遂げ、近年の作品で見られる精巧なイメージは通常絵画で使われる技法やコラージュ、彫刻表現をも取り入れている。ハイブリッドな美学様式を発明しているが、今なおロジャー・バレンの根幹にあるものは写真表現である事は確かである。2012年、南アフリカのケープタウンで結成されたレイブ/ヒップホップグループ、Die Antwoordのミュージックビデオ「I Fink U Freeky」の監督を務め、このYouTube動画は現在までに1億回以上の視聴回数を記録している。また2017年7月からはフランスのアルル国際写真祭にて廃屋を使い大規模なインスタレーション作品を発表し注目を集めている。
https://www.rogerballen.com/

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