Interview
Yoshitomo Nara

奈良美智インタヴュー
すべてをつなぐまなざしに宿るもの

AREA

東京都

奈良美智

―奈良さんの写真はスライドショーのイメージがすごく強いんですよね。プリントで展示するのとスライドショーで見せることは、奈良さんにとってどんな違いがありますか?

スライドショーは自分の世界観が表せる小さな個展のようなもの。僕の絵はグループ展だと輝きが少し翳る気がするんだけれど、個展になると、小さな絵でも大きな絵と響き合って本来持っている強さが出てきて、自分の心にも響いたものがちゃんと伝わる感じなのね。写真をスライドショーにするとそれと似た現象が起こって、1枚で見るとささいな写真でも、次に何が来るかで、最初に見た何でもない写真がすごく意味あるものに見えてきたり関連していく。今回の展覧会のタイトル「Will the Circle Be Unbroken」もそうだけど、複数の写真のつながりから、自分の世界観が浮かび上がってくる。全然違う場所で撮られた違う写真でも、最後には全部がつながる。アフガニスタンでもサンタモニカでも、結局場所は関係なくなっていく。地球とかもっと大きなつながりの中に自分たちがいることが、スライドショーで見せることで気付くことができる。

展覧会のスライドショーが流れる様子

展覧会のスライドショーが流れる様子

―スライドショーで複数の写真の関係性から立ち上がってくるようなものは、今回窓枠のような額を散りばめるようにインスタレーションをしているのと、感覚的にも似ているのでしょうか?

そう。それに1点だとわからないけれど、何点か組み合わせるとその人の個性が出てくるでしょ。何てことない作品でも、雑草とか石ころみたいに、それがなければ成立しないというか。

―このインスタレーションの写真の在り様は、奈良さんがタブローを描くプロセスで、カンヴァス上に現れるモザイク状の色彩の斑点を思い出させます。今回の展示用にプリントしたのですか?

2011年に水戸芸術館で震災後最初に開催された展示「Cafe in 水戸」に出しているかな。戸とか窓とかが捨ててあったのを取って置いたら、いつのまにか溜まっていて。その時にどのイメージをどの枠に入れるかを考えて、枠の色を塗ってプリントをトリミングして合わせた。プリントもわざとコントラストを強くしたんだけど、この展示は場所によって構成を変えているんだよね。だからその都度、壁でひとつの展覧会を構成していく感覚で組み合わせている。

展示風景

―2枚1組の組写真の作品も、気づかされることがとても多いですね。奈良さんがご自身の作品を撮った写真と、それ以外の写真を並べていますよね。

いつもはふたつでひとつのフレームに入っているんだけれど、今回この展覧会のタイトルを考えてそれぞれをくっつけて並べている。ふたつで完結しているはずなんだけれど、完結していない隣同士ともつながっていく。

―この組写真を見ていると、奈良さんにとっては作品と自然界にあるいろいろなものが、同じ価値を持って存在していることがすごくわかります。

こういう組み合わせなんかは、いろんなものが無意識で影響し合っていることが表れているよね。あとで気付くんだけどすごく面白いよね。トポロジーという数学の考え方があるんだけど、たとえば、お皿とお椀は形態的にはまったく同じで、蟻が歩くとしたらみんな同じように歩くことができる。それがお皿に一個穴を空けると、お皿と穴が空いたお皿はまったく違うものになる。でも取手がついているコーヒーカップなら、穴を空けたお皿と同じように蟻は歩けるじゃない。つまり穴の空いたお皿とコーヒーカップは、形態的に違うように見えるけれど、実は同じだと考えるのが、トポロジー的な考え方。わかりづらいかもしれないけど、そうやってトポロジカルに見ていくとすべてが自分の中でつながりを持っている。