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Rinko Kawauchi × Sohei Nishino

対談 川内倫子×西野壮平
写真賞プリピクテ ノミネート記念
身体と偶然性、二人が語る写真についてのエッセンス

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川内倫子×西野壮平

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2008年にスイスのプライベートバンクであるピクテによって設立された写真賞Prix Pictet(プリピクテ)は、いま世界的な写真アワードとして高い注目を集めている。今年は「Prix Pictet:SPACE(宇宙・空間)」のテーマともと、12名の写真家がノミネートされ、最優秀賞にはリチャード・モスが選出された。ノミネート作家によるグループ展は世界12カ国以上に巡回され、11月23日(木)よりいよいよ東京へ上陸する。今年この賞にノミネートされ、世界を舞台に活躍する川内倫子と西野壮平が、プリピクテのこと、お互いのキャリアのこと、そして制作の裏側を語り合う。

ナビゲーター=小高美穂
構成・文=IMA
写真=宇田川直寛

―今年のプリピクテにノミネートされて、V&A美術館で最初の展覧会「Prix Pictet:SPACE(宇宙・空間)」が5月に開催された時に、お二人とも現地へ行かれましたよね。展示に参加されていかがでしたか?

西野壮平(以下、西野):「SPACE(宇宙・空間)」というテーマのもとで12名の作家が選ばれていましたが、各作家の作品が力強く突出した個性を感じました。

―ジャーナリズムに寄ったドキュメンタリー写真もあれば、トーマス・ルフやマイケル・ウルフのようにアートの文脈の中でとらえられる作家など、多様なセレクションですよね。

川内倫子(以下、川内):そうですね。見たことのある作品でも、「SPACE」の視点で見るとまた違った見え方ができたり。国は違っても、みんな同じ地球という星の上に生きていて、それぞれ同じように問題を抱えていることは共通していると感じました。

西野:僕なんてまだまだ若手なので、ノミネートされたのは驚きでしたね。

川内:年齢層も幅広かったですよね。最優秀賞に選ばれたリチャード・モスは38歳でしたし、もっと若手の方も選ばれていました。アートやドキュメンタリーなどジャンルが混ざっているのも、写真の賞としては珍しい。その多様さこそが写真の面白さでもあります。

―プリピクテは今回で7回目になるのですが、今回の「SPACE」というテーマは、ご自身の作品とどのように結び付いていると思いますか?

西野:僕の場合は、制作時は常に地球をどの視点から見るかを意識しています。最近はGPSを使ったり、衛星写真を用いた作品も制作しています。共通しているのは、いかに自分の思考を変えて自由自在な視点を持てるか。そういう意味で今回「SPACE」で選ばれたのは、必然のような気がします。

川内:私は今回選ばれたシリーズ「あめつち」が、特に「SPACE」というテーマとつながったのだと思います。ほかのシリーズだとまた違ってきたかもしれません。「あめつち」の制作で阿蘇を訪れたとき、初めて自分が地球上に立っている実感を覚えたことが重要な体験としてあります。

Rinko Kawauchi, Untitled, from the series

Rinko Kawauchi, Untitled, from the series "Ametsuchi" 2013

―これまでご自身の展示の中で、ターニングポイントになったものや、特に印象深いものを教えてください。

川内:2005年のカルティエ財団美術館での個展は、初めての海外での大きな展示でいろいろな経験をさせてもらいました。展示の内容としては、2012年に東京都写真美術館での「照度 あめつち 影を見る」では、空間を作る点で自分にとってベストな構成ができたと思います。最近では、2015年にGUCCI新宿店で行なった、映像中心のインスタレーションですね。

川内倫子「Let's sing a song our bodies know」GUCCI新宿店(2015年)

川内倫子「Let's sing a song our bodies know」GUCCI新宿店(2015年)

西野:僕は昨年のサンフランシスコ近代美術館での個展です。世界中から観光客やアート好きも含めて本当に幅広い層の人が日々来場するので、いままでにない数の人に作品を見てもらう機会になったし、反響もありました。また2012年にスイスで行われていたフェスティバル「Images」に招待されたとき、ターポリン素材の生地に作品を10メートル四方でプリントし、大きな台の床に貼って、鑑賞者がその上を歩けるようなインスタレーションを町の広場に展示しましたが、そこでは作品をできる限り大きく見せたい欲求が実現できました。この展覧会後には、素材をすべて裁断して、鞄を作ったんです。

西野壮平「New Work: Sohei Nishino Exhibition」サンフランシスコ近代美術館(2016年)

スイスのフェスティバル「Images」(2012年)での展示風景

スイスのフェスティバル「Images」(2012年)での展示風景

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