Talk
Rinko Kawauchi × Sohei Nishino

対談 川内倫子×西野壮平
写真賞プリピクテ ノミネート記念
身体と偶然性、二人が語る写真についてのエッセンス

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川内倫子×西野壮平

Sohei Nishino, Diorama Map Havana, 2016 Series: Diorama Map, 2010–16 © Sohei Nishino, Prix Pictet 2017

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―海外でもよく作品を展示されていますが、海外の観客から日本人的だといわれることはありますか。

西野:僕の場合は細密な作業をしているので、それが日本人的だと受け止められることがあります。自分では意識はしてなかったので、そう見られているのかと逆に気づかされました。

川内:私は俳句的といわれることがあります。自然を描写している部分や、写真を組み合わせることで表現している部分が、俳句的ととらえられているのかもしれません。それは自分でも目指している部分なので、いまはしっくりきています。

西野:川内さんの写真集では、連続したイメージや対のイメージの印象がありますが、ご自身で意識的に構成しているのでしょうか?

川内:そうですね。例えば連続した写真の間に、違うシーンで撮られた写真を挿入するのは、それによって時間の流れを感じさせるため。ひとつの出来事が起こる1秒間に、無意識的に違う記憶が頭の中に浮かぶことってありますよね。そういうふうに自分の中の無意識に触れることを試みています。

西野:僕はコンタクトシートが好きですね。その人自身の心境の変化を垣間みられる気がします。

川内:私もあとからコンタクトシートを見返して気付くことがあります。死んだ鳥を撮った直後に、生きている鳥を撮っていたとか。偶然の面白さをシェアしたいなと思って『SHEETS』を作りました。コンタクトシートは普通見せないものかもしれませんが、自分でも見返して楽しいので、それを共有したいんです。

『SHEETS』(2014、Kominek)

『SHEETS』(2014、Kominek)

『SHEETS』(2014、Kominek)

西野:めちゃくちゃ楽しいですよね! 僕は学生時代からよく友達には選ぶなっていっていました。

川内:選ぶと自分の意識やくせが入るから、ときどきそれがつまらなくなります。でも選ばないコンタクトシートにさえ、自分のクセがみえる。だからセレクトではミスショットや、歩きながらたまたま撮れたものもあえていれたりすることがあります。無意識で撮れたものの中に、答えがあるのではと思っています。

西野:呼吸のように撮りたいですね。意識していないけれど、息はしている。

川内:まさにそう。「うたたね」の中には、暗室で露光しただけの真っ黒のページが1枚あります。なぜかというと、まばたきの瞬間を入れたかったから。無意識のうちにしているまばたきを、あえて写真集の中に真っ黒のページとして入れたんです。

西野:自分の身体感覚をどうやって表現するかは、どの写真家にとっても共通の命題ですね。都市は情報量がとても多いので、歩いていると、ある時点で情報を体が受け付けなくなる時があります。そこで自分の頭が覚醒するというか。その感覚がとても気持ちよくて、歩く行為がいかに人間的かに毎回気付かされます。

川内:制作過程で、ある種の瞑想状態を経ているんですね。私にとっても作品を作っていてやりがいがあるのは、そういう境地になったとき。特に身体を使って集中して撮影しているときに訪れやすいです。たまに「奇跡のような瞬間ですね」といわれることがありますが、それはその扉を開けたときに撮ることができた写真なのだと思う。

西野:僕の場合、道に迷ったり、路地を歩いている時にそういう状態に入ります。危険な地域にいくこともあるので、常に感覚を研ぎ澄まさないといけないことも関係しているのかもしれません。

川内:偶然性とか自分がコントロールしていない部分から、面白い写真が生まれますよね。そういうマジック的なものを取り込むことで、作品が完成するのだと思います。

川内倫子×西野壮平

―今後どのような作品を制作予定か聞かせて頂けますか?

川内:最初の作品集『うたたね』(2001年)を出して20年弱が経ちました。『うたたね』のモチーフは半径1メートルくらいの世界。最新作の『Halo』はもっと範囲が広くなり、さまざまな場所で撮影して、宇宙に繋がっていくようなイメージになりました。でも子供が生まれてまたささいな日常を撮ることに興味がでてきました。あとは映像作品をもう少し集中して作っていきたいですね。

西野:いまは東海道をテーマに、実際に東海道を歩いて、歌川広重が見た風景を探しながら制作しています。あとは、いままで都市を中心に大きな被写体と対峙してきたので、小さな被写体に視点を当てるようになりました。今年アメリカのノースカロライナ州でレジデンスをしたのですが、そこは大自然のなかにぽつんと家があるような場所だったので、顕微鏡やマクロレンズを持って撮影をしました。小さな世界の中にも、虫や微生物が生きていて、都市と同じくらいレイヤーがある。そういう体験を次の作品につなげていきたいですね。

タイトル

プリピクテ国際写真賞「Prix Pictet SPACE (宇宙・空間)」 東京巡回展

会期

2017年11月23日(木)~12月7日(木)

会場

ヒルサイドフォーラム(東京都)

時間

11:00~19:00

休館日

無休

入場料

無料

URL

http://www.jp.prixpictet.com

川内倫子|Rinko Kawauchi
1972年、滋賀県に生まれ。2002年に『うたたね』『花火』で第27回木村伊兵衛写真賞を受賞。著作は他に『AILA』(2004年)、 『the eyes, the ears,』『Cui Cui』(ともに2005年)、『Illuminance』(2011年)、『あめつち』(2013年)などがある。主な個展に「AILA + Cui Cui + the eyes, the ears,」カルティエ財団美術館(2005年・パリ)、「AILA + the eyes, the ears,」ハッセルブラッド・センター(2007年・イエテボリ、スウェーデン)、「Semear」サンパウロ近代美術館(2007年・サンパウロ)、「Cui Cui」ヴァンジ彫刻庭園美術館(2008年・静岡)、「照度 あめつち 影を見る」(2012年・東京都写真美術館)、「Illuminance」(2015年・KUNST HAUS WIEN GmbH、ウィーン)、「川が私を受け入れてくれた」(2016年・熊本市現代美術館)ほか多数。2017年に最新作『Halo』を刊行。

西野壮平|Sohei Nishino
1982年、兵庫県生まれ。歩くこと、旅を通して得た個人的体験をもとに作品を制作している。2013年日本写真協会新人賞、Foam Talents Call 2013、2016年さがみはら写真新人奨励賞。主な展示に「DAEGU PHOTO ビエンナーレ」(2010年・大邱、韓国)、「日本の新進作家展vol.10」(2012年・東京都写真美術館)、フェスティバル Images Vevey (2012年・ヴェヴェイ、スイス)「Of Walking」 グループ展(2013年・Museum of Contemporary Photography, シカゴ)「A Different Kind of Order」(2013年ICP、ニューヨーク、アメリカ)、「New Work: Sohei Nishino Exhibition」個展(2016年・サンフランシスコ近代美術館、アメリカ)等がある。2018年1月にイタリアのMAST Foundationでのグループ展で川をテーマにした作品を展示予定。

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