Interview
Stephen Gill

スティーブン・ギル インタビュー
誰も見たことのないイメージを作り続ける気鋭の写真家と、
京都に残る伝統的プリント技法が魅せる新境地とは?

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便利堂の工房でプリント作業をするスティーブン

便利堂の工房でプリント作業をするスティーブン

―これまでの作品でも、作者の介入を抑えることで、新しい写真表現を提示してらっしゃいますよね?

イメージの作り手として、作者が一歩身を引くことによって、被写体が自ずと前面に出てくる方法を探求し、さまざまな方法を試してきました。「Talking to Ants」では、撮影した場所で採取した生きた植物や虫、種、ほこりなどをカメラの中に入れたフォトグラム作品を作り、「Best Before End」では、写真乳剤を化学変化させるエナジードリンクの性質を利用して現像ました。被写体になんらかの役割を担ってもらうことで、作者の意図と偶然の出会いによってイメージを作ったのです。今回の場合、私自身は完全にイメージづくりから手を引き、私が眠っている時間に被写体たちが作者の役割を担い、イメージを作ったり演じたりしているような感じでしたね。自然そのものが自身について語る作品といえると思います。

―本作では、切り取るイメージに対するコントロールを抑えていますが、最終的にどのイメージを使うか、またどのようなプリントとして仕上げるのかの選択は行われています。

イメージを選ぶときは、作品に時間を与えるようにしました。作品そのものが作品自身を構成するための余白を残したかったのです。作品を紙に印刷して日々の暮らしの中で眺めたりして、イメージのことをよく理解しようとしました。また同時に、あまりにも近づきすぎてイメージが窒息してしまわないように気を配ることも忘れませんでした。プリントの色調や雰囲気は、自然から受けたインスピレーションをもとに決めました。マスタープリントには、この地域に生えている植物で作った顔料を用いています。

便利堂の工房で作業をするスティーブン

便利堂の工房で作業をするスティーブン

―コロタイプに興味を持った理由とは?

私は、若い頃からさまざまな技法をインスピレーション源にしながら作品を作ってきました。それはいまも変わっていません。作品自身が表にでてきて息をするためにはどうしたらいいかを探求してきたので、コロタイプには自然と惹きつけられましたね。本作とコロタイプはとても相性が良いと思ったので、Hariban Awardに応募しました。オリジナルのプリントには植物性の顔料を使ったので、インクを用いたらどうなるのか見てみたいとも思っていましたし。デジタル時代において、昔ながらの印刷技術を体験し、学ぶ機会を得たことを非常にうれしく思っています。

便利堂の工房で作業をするスティーブン

便利堂の工房で作業をするスティーブン

―実際にコロタイプを体験し、オリジナルとはどのような違いがありましたか。

便利堂の職人の方たちと一緒にプリントしたイメージは、私が作ったマスタープリントと非常によく調和していると感じました。コロタイプの工程では、コントラスト、濃淡、色、陰影、ディテールの強調など、あらゆる要素を細部にいたるまで調整することができるので、表現の可能性が無限に広がっています。便利堂では、さまざまな技術を駆使してそのすべてをコントロールすることが可能です。経験豊富な技術者たちとは視覚的な理解の仕方を共有しているので、意見交換をしたり、アイデアを言葉にすることが、実にスムーズにできました。今回新しく作ったプリントには、オフホワイトの和紙を使用し、生き生きとした豊かな仕上がりになりました。

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―本作は、どこかで見ることができるのでしょうか?

来年の春にHariban Awardの受賞者展として、京都で個展が開催される予定です。今回の滞在でも下見に訪れてきました。春にみなさんにご覧いただけるのを楽しみにしています。

タイトル

『Night Procession』

出版社

Nobody

発行年

2017年

仕様

ハードカバー/216×270mm/160ページ

URL

https://www.nobodybooks.com/product/night-procession
https://benrido-collotype.today
http://haribanaward.org

スティーブン・ギル|Stephen Gill
1971年、イギリス、ブリストル生まれ。ロンドン東部に位置するハックニーを拠点とし、『A Series of Disappointments』『Hackney Flowers』『HACKNEY KISSES』など、そのエリアを舞台とした代表作も多い。出版レーベル・Nobodyを運営し、自身の作品集を多数発表している。現在は、スウェーデンを拠点に活動する。