Photographer's Table

写真家の食卓【前編】
川内倫子×テリ・ワイフェンバック

川内倫子×テリ・ワイフェンバック

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写真家は料理上手が多い?そんな噂を解明すべく、写真家の食卓を訪問。川内倫子の食卓を訪れたのは、アメリカから来日していたテリ・ワイフェンバック。プライベートでも親交の深い二人が、写真と料理の話に花を咲かせる。

文=深井佐和子
写真=齋藤圭吾

二人の出会いは、2009年のニューヨークに遡る。偶然に知り合った二人は、その後2011年にパリで再び邂逅する。その縁をきっかけに、いつの間にかメールのやり取りに写真を添付して送り合うようになった。2014年に出版した『Gift』は、そんな二人による写真の往復書簡がまとめられた写真集だ。『Gift』の出版から3年が経ち、IZU PHOTO MUSEUMでの個展「The May Sun」のために来日したテリ・ワイフェンバックを、川内倫子が料理でもてなす。

テリ・ワイフェンバック(以下“ワイフェンバック”):今日は六本木の滞在先から歩いてきましたが、風が気持ちよくて、まるで桜の絨毯の上を歩いているようでした。

川内倫子(以下“川内”):絶好の散歩日和ですね。ごめんなさい、まだ準備が終わってないの。本当は創作プロセスを見せたくなかったんだけど(笑)。

ワイフェンバック:写真と一緒ね(笑)。今回、倫子の料理を食べられるなんて、私はとてもラッキーね! どの料理もとても美しいですが、日本の伝統的な料理なの?

川内:一般的な日本の家庭料理ですね。旬の食材を使った、春らしい献立にしました。

ワイフェンバック:この山菜は自分でとってきたの?

川内:はい、このワラビは自分で横須賀の山から採ってきたものです。今日のメニューについて簡単に説明しますね。スナップエンドウと干しタケノコの炒め物、7日間塩漬けして寝かせた豚肉のロースト、切り干し大根とわかめ、たこときゅうりの酢の物、具だくさんの筑前煮。そしてメインはちらし寿司。作り方は母に教わりました。

ワイフェンバック:お母様のレシピを踏襲するの? それともアレンジを加えますか?

川内:少しだけ私流にします。例えば、母のちらし寿司は砂糖を多めに使いますが、少なめに量を調整していたりとか。

川内倫子

普段からよく友人たちを招いて手料理をもてなすという川内。準備も手際良い。

ワイフェンバック:一緒に『Gift』を作っていたときに、写真と料理の話をしたことがありましたよね。そのときはさまざまな色の要素を入れることの重要性について話しました。料理も、写真と同じように色合いやテクスチャーの美しさが重要です。写真というメディア自体は世代から世代へと引き継がれていますが、倫子の写真は倫子だけのオリジナルなもの。今日の料理も、お母様のレシピを踏襲しているけれども、同時にあなたオリジナルのものでもある。そう考えると、類似点がありますよね。

川内:そうですね。アレンジしていくという点も似ています。テリも、お母様から料理を教わりましたか?

ワイフェンバック:残念ながら、私の母は料理が下手だったので、教わることはできませんでした(笑)。私の場合は、20代初めに1年半過ごしたニューメキシコ州で料理を覚えました。ガスは使わず、薪ストーブの上で調理して、果物は近所の人たちと交換したり、庭の野菜からチキンやラムまで、すべてその土地の食材を使っていました。

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写真と料理の共通点

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