Photographer's Table

写真家の食卓【前編】
川内倫子×テリ・ワイフェンバック

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お皿に盛られた料理の数々。みずみずしい旬の食材たちと、ちらし寿司の色彩が、食卓に彩りを添える。

川内:ワイルド!写真と料理の類似点といえば、撮影が狩猟に似ていて、プリントは料理に似ているところ。

ワイフェンバック:確かに、撮影のことを「シューティング」というように、同じ語彙を使うものね。フィルムのプリントの作業は、まさに料理のようで、細かいプロセスを積み重ねて最終形に仕上げていきます。

川内:コントロール可能な点も似てますね。1分長く現像液に浸ければ色が濃くなる、というように、どちらも工程と結果を理解し、仮定しながら進めていく作業ですから。

ワイフェンバック:写真においての光は、料理では炎でしょうか。私は料理本を読むのが好きなのだけど、どのように材料を組み合わせ、どのようなスパイスを使って、どのような色になるのか、文章だけを読んで、あとは好きなように作るスタイル。私のプリントの作り方と似ているかも(笑)。ただ、日本料理の方がアメリカ料理よりも色が重要ですね。より繊細な感覚をもって作られているように感じます。

川内:写真についても、そう思いますか?

ワイフェンバック:特にアメリカの写真界では、直感だけでなく、アイデアやコンセプトを重視しなければならないと言う暗黙のプレッシャーがあります。日本の方が、感覚、体で感じることを大切にされていますよね。私は、両方存在していることが大切だと考えます。料理においてもそうですよね。調理時間や味付けの分量などを感覚で判断することが、とても大切です。

川内:この3年間で、お互いの私生活にさまざまな変化がありましたね。

ワイフェンバック:二人ともパートナーに出会い、倫子は出産もしましたね。その間も私たちの往復書簡は、以前と同じように続いていますし、あなたは出産後も変わらず精力的に作品を制作しています。本当に驚くべきエネルギーですが、あなたの写真からはいつも誠実さを感じます。前作の『あめつち』では、私は生まれて初めて、火を見て強く優しいと感じたんです。それまで私にとって、火はただ攻撃的なものでした。

川内:火は危険ですが、人間にとって重要な道具でもあります。あの作品の制作は、野焼きの自然を保つために燃やす火という考え方に興味を持ったのがきっかけです。

ワイフェンバック:新刊『Halo』には、特定の場所ではなく、さまざまな場所で撮られた写真が収録されていますよね。過去の作品も入っているんですか?

川内:いえ、今回はすべて未発表の新作です。

ワイフェンバック:先ほどダミーブックを拝見しましたが、あの本の世界にいつまででも浸ることができる、祝祭のような本ですね。

『Halo』のダミーブック

6月に発売になる川内の新作写真集『Halo』のダミーブック。光と闇のイメージが装丁に落とし込まれている。