Photographer's Table

写真家の食卓【後編】
川内倫子×テリ・ワイフェンバック

川内倫子×テリ・ワイフェンバック

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写真家は料理上手が多い?そんな噂を解明すべく、写真家の食卓を訪問。川内倫子の食卓を訪れたのは、アメリカから来日していたテリ・ワイフェンバック。プライベートでも親交の深い二人が、写真と料理の話に花を咲かせる。後編では、現在開催中のテリの個展「The May Sun」を通して、二人の写真の根底に通じるものについて語る。

文=深井佐和子
写真=齋藤圭吾

前編はこちら

川内倫子(以下“川内”):今回のテリの個展「The May Sun」は本当に美しくて、とても感動しました。IZU PHOTO MUSEUMでの滞在制作で撮影された色彩豊かな新作「The May Sun」と、政治的なメッセージも読み解けるモノクロの作品「The Politics of Flowers(以下“PF”)」、対照的なふたつの花のシリーズを組み合わせるアイデアは、どのようにして浮かんだのですか?

テリ・ワイフェンバック(以下“ワイフェンバック”):滞在制作中に館長の岡野晃子さんが「PF」を気に入ってくれたのですが、そのときは展示のアイデアが思いつきませんでした。ですが、彼女が隣接しているヴァンジ彫刻庭園美術館に連れて行ってくれ、その庭に感銘を受けました。すべての花が美しく「生かされて」いて、枯れ始めた花は切られているので、そこにあるのは、「生」と「美」のみ。対して「PF」の花は枯れています。対極にあるようですが、ある点では一緒だという結論に至りました。それはどのような生であっても、写真がとらえられるのは、ひとつの瞬間のみであるということ。同じ花という題材ですが、ひとつは生きている時間で、もうひとつは硬直した時間、そのふたつの瞬間が向き合っている。すべては死に向かっているという真実、そして写真は、その長いプロセスの一瞬だけを写しだしています。

The Politics of Flowers

「The Politics of Flowers」は、2003年に最愛の母を亡くしたワイフェンバックが、紛争の絶えないパレスチナに咲く花を採集して作られた19世紀の押し花帳と出会ったことで生まれた。

川内:会場に入ったとき、ある強さを感じました。私の好きなテリの世界だけど、同時にとても新しい。

ワイフェンバック:早朝や深夜、美術館の閉館後も、何度もたった一人で静かな時間を庭園で過ごしました。私はあの空間と花たちを表現する言葉を持たないので、写真にしたのかもしれませんね。時として、撮影する瞬間の経験は、写真そのものにも勝るときがあるとも感じます。

川内:全く同感です。なぜ「The May Sun」のプリントを大きくしたのですか?

ワイフェンバック:観客にイメージの世界に入り込んでもらい、庭にいるかのように感じさせたかったのです。「PF」では、紙の色をできるだけ壁の色に近づけて、押し花が視界に大きく入ってくるようにしました。

川内:「PF」には、いくつものレイヤーが存在していますよね。美しさや悲しみや、衝突も含まれているけど、私たちには常に希望がある。それを見せてくれました。

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静かなる問題提起

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