Photographer's Table

写真家の食卓【後編】
川内倫子×テリ・ワイフェンバック

The May Sun

IZU PHOTO MUSEUMでの長期滞在の際に制作された「The May Sun」。庭の木花の美しさに包み込まれる。

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ワイフェンバック:うれしいです。「PF」は、私を新境地へと導いてくれた重要な作品。自分の作品が自分を新しい場所に連れて行ってくれて、また新しい挑戦ができる。美しさは世界にとってとても重要なこと。倫子の、このお皿に盛られた料理にも美がある。皮肉なことに、アートの世界では美は十分に理解されていないと感じるんです。本当の美しさは、また別のレベルの知的な理解をもたらしてくれます。

川内:本当の美とは何かを考えることは重要ですね。難しいけれど、私もその問いを追い続けたいと思っています。

ワイフェンバック:それが私が倫子の作品の好きなところ。あなたは作品を通して問い続けている。

川内:世界はそういうものですよね、答えはどこにもないんです。

ワイフェンバック:その通りです。それでも私たちは、その問いの答えを追い求める。

川内:テリの展示を見て、「PF」は現代社会が抱える問題を反映し、「The May Sun」では、逆説的に人の手によって美しく咲く花を写しだしている。そこに人の持つ力という希望を見いだすことができるし、この展示はひとつの祈りのようだと思いました。私は、『あめつち』で阿蘇を撮影したときもそう思ったんです。野焼きは緑を保つためのもので、人の力で自然が保たれ、人と自然が共生している。

ワイフェンバック:祈りというよりは、瞑想かもしれません。「祈り」はより言語的なものですが、瞑想は、ある状態を指しています。私は人にひとつの考えを押し付けることは望んでいなくて、むしろある瞑想空間を提供するよう心がけているんです。

川内:作品を通してその空間を共有しているんですね。

ワイフェンバック:そうですね。「PF」は聖地の花なので、スピリチュアルかつ政治的な要素を孕んでいます。宗教の複雑さ、信仰の是非、変化し続ける人類の難しさと、そこから見いだす希望を、見る側に、気づくことをそっと促す作品なんです。

川内:静かに問題提起をしているんですね。

ワイフェンバック:指さして何かを責めるのではなく、そっと手を差し出して問題を提示している感じ。倫子の写真も同じですよね!わめき立てるのではなく、小さな声で「ほら、見て」って。

―二人の『Gift』は、まだ続いているのでしょうか?

ワイフェンバック&川内:そうですね、ゆっくりと。でも、それは私たちだけの秘密です(笑)。

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