Book Review
Mao Ishikawa

原初的な強さをとらえた女性讃歌
ブックレヴュー『赤花 アカバナー、沖縄の女 Red Flower The Women of Okinawa』石川真生

Red Flower The Women of Okinawa

PREVIOUS PAGE 1 2 3

このような、女性一人一人に肉薄する石川の姿勢は、黒人兵に対しても変わることはない。軍服を脱ぎ、私服を着てバーで寛ぎ、女性たちとの時間を楽しむ黒人達の姿をとらえた写真は、石川が彼らの男性としての魅力に惹かれ、彼らの友人や恋人のような近しい人として、その場の状況に反応するようにしてとらえたものであることを生き生きと伝えている。

Red Flower The Women of Okinawa

Red Flower The Women of Okinawa

石川が黒人兵に向き合う態度は、彼らを軍隊という組織の中に位置づけて判断するのではなく、あくまでも個人として名前を呼び合う関係に根ざしており、撮影された米兵の中には本国に戻った後も親しく交友を続けた人もいる。(その中の一人が、海兵隊員だった親友のマイロン・カーであり、石川は1986年に彼の元を訪ね、滞在中の写真をまとめた写真集『Life in Philly』(Gallery Out of Place / Zen Foto Gallery, 2010)を刊行している。)このように、一人一人の人に対峙し、対話する姿勢が、複雑な背景を持つ沖縄の基地問題に取り組み、『これが沖縄の米軍だ 基地の島に生きる人々』(國吉和夫との共著 高文研、1996年)、『FENCES, OKINAWA』(未來社、2010年)のような作品を生み出す原動力へと昇華されていったことも納得できる。

石川は現在、『大琉球写真絵巻』の制作に全身全霊を込めて取り組んでいる。沖縄の歴史のさまざまな局面を写真として表し、伝えるための壮大なプロジェクトが進められているいま、彼女の活動の原点である『赤花 アカバナー、沖縄の女』を契機として、今後世界中から評価が寄せられることを期待したい。

タイトル

石川真生『赤花 アカバナー、沖縄の女』

出版社

SESSION PRESS

価格

11,000円+tax

発行年

2017年

仕様

ソフトカバー/229mm×330mm/112ページ

URL

https://twelve-books.com/products/red-flower-the-women-of-okinawa-by-mao-ishikawa

石川真生|Mao Ishikawa
1953年、沖縄県・大宜味村(おおぎみそん)生まれ。1974年に写真家・東松照明のワークショップに参加し、本格的な撮影活動を始動する。一貫して沖縄を主題とし、1977年に「金武の女たち」の写真展を皮切りに、撮影の成果を常に出版物と展覧会として発表し続けている。2004年の横浜美術館での「ノンセクト・ラディカル 現代の写真III」の出品をはじめ、ニューヨークのPS.1や東京国立近代美術館、沖縄県立博物館・美術館の展覧会など発表の場を広げている。ライフ・ワークでもある「大琉球写真絵巻プロジェクト」は、歴史的な事象を再現しながら、琉球王国時代から現代に至るまでの壮大なスケールで構成されるこれまでにない形式の写真を展開している。

小林美香|Mika Kobayashi
写真研究者。国内外の各種学校/機関で写真に関するレクチャー、ワークショップ、展覧会を企画、雑誌に寄稿。2007~2008年にAsian Cultural Councilの招聘、およびPatterson Fellowとしてアメリカに滞在し、国際写真センター(ICP)およびサンフランシスコ近代美術館で日本の写真を紹介する展覧会/研究活動に従事。2010年より東京国立近代美術館客員研究員、2014年から東京工芸大学非常勤講師を務める。

PREVIOUS PAGE 1 2 3

Recommend Posts