REVIEW: EXHIBITION

日本を写し出す現代のマンダラ

宇佐美雅浩「Manda-la」

2015.Feb.24

TEXT: HIROYUKI WATANABE

01友人の部屋からヒロシマへ。20年の作家活動で初の個展

 東京・市ヶ谷のMIZUMA ART GALLERYで2月13日(金)より宇佐美雅浩「Manda-la」展が始まった。写真家・宇佐美雅浩が20年の歳月をかけて撮影してきた作品のうち、22点から構成されている。

 美大の学生だった頃の課題用に友人とその部屋を撮影して以来、作家本人が予想もしなかった長きにわたる撮影期間を経てようやく発表されるに至った本展は、意外なことに、宇佐美にとって初の個展だ。

「学生時代に写真を始めた頃、僕は、写真は絵画や彫刻といったほかの芸術表現に比べて弱い、と思っていました。もとは美大で絵やイラストを描いていたこともあって、写真は『撮れちゃう』っていう感覚を持っていたし、複製芸術ゆえに軽視されている部分があると思っていたんです。写真っていう表現にコンプレックスを感じていたんですね。だからこそ、ほかの芸術表現よりも強い作品を作りたいと思って撮り続けてきました」

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 20年間のキャリアの中で一度も作品を発表してこなかった理由は、グラフィックの世界から写真の道に移った宇佐美が納得のいく、複製芸術という写真の特性ゆえに抱いたコンプレックスを凌駕するのに十分なレベルの写真を用意できなかったからだという。いわば、「Manda-la」展は満を持しての写真展というわけだ。そして、宇佐美雅浩という写真家が「友人の部屋」というごく私的な領域から被爆地である「ヒロシマ」へと、作品世界を拡張し、より広い社会性を獲得してきた軌跡でもある。 

「『Manda-la』はサンスクリット語で『manda』と『la』に分かれているんです。『manda』は『真実』『真髄』といった意味で、『la』は『所有する』っていう意味なんですね。それを強調するために、タイトルでは『manda』と『la』の間にあえてハイフンを入れたんです」

 マンダラ(曼荼羅)という言葉はさまざまな意味を含んでいるが、日本においては仏教の世界観を1枚の平面で表現した絵画を指す。タイトルの通り、展示されている作品のひとつひとつは、イメージの中心部に核となる人物を据え、周囲にゆかりのある人や物、背景にある地域性やカルチャーなどを表す事物を配置することで、その人物を取り巻く世界を1枚の写真で表現するという、マンダラの形式を踏襲している。 

 撮影場所は日本各地におよぶ。正面の白壁に下げられた最新作の「広島」をはじめ、個々の作品が立体的に展示されたギャラリースペースの中央に立つと、まるで宇佐美の創り出した宇宙の中心にいるような気分になる。あたかも、展示そのものが、作家である宇佐美を含めた、観る者にとってのマンダラであるかのように。

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02へ続く)

Information

「Manda-la」

フォトグラファー:宇佐美雅浩

2015年2月13日(金)〜28日(土)

会場:MIZUMA ART GALLERY

写真展の詳細はこちら

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