ロサンゼルスのLA Art Book Fairで
アートブックの最前線をキャッチ

ロサンゼルスがアートブックファンに沸く、
約300の出展者が世界中から集まるLA Art Book FairをIMA編集部が現地レポート Vol.2

REVIEW

08 March 2017

Share

LA Art Book Fair

奥に見える数字はマイク・ミルズとExperimental Jetsetによるコラボレーション作品。
数字は昨年の大統領選で、ヒラリー・クリントンがリードしていた一般投票数を意味する。

メインスペースとなる1階にも、おなじみの写真集出版社の姿が。スペインを拠点とするDalpineには、リカルド・カセスや『IMA vol.18』で表紙となったフェデリコ・クラヴァリーノによる実験的なZINEや写真集が揃う。リカルド・カセスの『El blanco』は、2007年にマリを旅して撮られた写真を、2015年にIván del Rey de la Torreのテキストを添えて再編集されたもの。ストリートフォト精神が根底に流れるスペイン写真において、Dalpineは作家との恊働作業に重きを置きながら、新しいスペイン写真の文脈を作り出しているのがうかがえる。

1階の通路には、ロンドンのSelf Publish, Be Happy(SPBH)のブースも。このブックフェアで最新刊ニコラス・ミューラー『In Most Tides an Island』のローンチも行われ、チャイナタウンにあるアーティストランスペース「The Poetic Research Bureau」ではミューラーのプレゼンテーションと作家を囲んだパーティが行われた。本書は約350ページからなる分厚い一冊で、ロシアの田舎町でゲイであることを隠して暮らす男性たち、熱帯の孤島で一人寂しく生活する女性を主人公にしたふたつの異なるストーリーが交差し、その合間にトロピカルなランドスケープや男性のポートレイト写真などが収録されている。ドキュメンタリーとフィクションの境界線が消失していくハイブリッドな構成が独自の写真言語を生み出している。昨年のパリフォトでは、ARを用いて拡張現実を取り入れたルーカス・ブレイロックによる『Making Memeries』をリリースし、先端テクノロジーによる新たな本の表現を提示したが、この本では、写真と小説の新たな関係性に挑戦したといえるだろう。SPBHによる写真集は、一筋縄ではいかないものも多いが、読み解き方を知れば知るほど魅了されてしまう。

ブルーノ・ケシェル

Self Publish, Be Happy主宰のブルーノ・ケシェル。壁面に貼られた大きなポスターは、『In Most Tides an Island』の表紙。

続いてはオレゴン州ポートランドに書店とギャラリーを併設したスペースを持ち、まだ無名の作家やアウトサイダーアーティストの展示の開催に合わせて出版も行うAmpersand Gallery & Fine books。アレック・イーガンによる色鮮やかに山脈を描いたペインティング作品と、ジョーダン・サリヴァンがカルフォルニアのデス・ヴァレーをとらえた写真作品を広い壁面に飾り、フェアの中でも特に目立っていた。展示作品は、どれも新刊に収録されていているのだが、ここではサルヴァンの写真集を紹介する。本書は、ロサンゼルスを拠点とするライターでありアーティストでもあるサリヴァンが、何度もデス・ヴァレーを訪れ、その時に感じた時間やスペースの感覚を表現した作品集で、山や空を撮った写真を自由に入れ替えることのできるインターラクティブ性のある、あえて綴じない仕様を用いており、好きなページをポスターとして飾ることもできる。

LA Art Book Fair Report

  • Vol.1

    Vol.1

    写真を軸としたパブリッシャーで賑わう「Focus: Photography」

  • Vol.3

    Vol.3

    ローカルなブースを巡ってトレジャーハンティング

  • Vol.4

    Vol.4

    写真家自身が運営する気鋭のレーベルとフェアの傾向を総括

Share

Recommend Posts