新緑の上野で、写真を通して見えないものを可視化する「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO」レポート

Vol.1 上野公園を舞台に、屋外で写真を見る楽しみ

REPORT

24 May 2017

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鈴木理策の展示作品

鈴木理策の展示作品

東京では初の屋外型フォトフェスティバルとなる「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO」が、5月28日まで上野公園とその周辺エリアにて開催中だ。「Invisible Stratum-見えない地層-」をテーマとした本展は、私たちの世界に存在するさまざまな目に見えない層を、写真によって可視化しようと試みるアーティストの作品を紹介している。土地の歴史や周りの環境とリンクした展示方法も、作品を見る上での重要なポイントとなっている。作家やキュレーターたちの声とともに、『IMA』が見どころをピックアップ。

文=小林祐美子
写真=IMA

まずは上野公園内の作品から紹介。上野公園のほぼ中心に位置する噴水広場に展示されているのが、鈴木理策の「水鏡」。故郷の熊野や桜、雪など多様な対象を通して、「『見るということ』そのものを提示したい」と語る作者のシリーズのひとつ。噴水のある池の水底に沈められるように展示された6点の作品は、それぞれ水の中を泳ぐ魚や、水草、水上に咲く花などが被写体となっている。本展共同キュレーターの小高美穂は、この作品が「私たちは水面を見るとき、どこを見ているのだろうか、その思考を探りたかった」と語る。写真の被写体には水面に反射する光や外界の映り込み、水中の生き物や植物といったさまざまなレイヤーが存在しているが、さらにその写真が水中に展示されることで、実際の世界で起きる水の揺らぎ、木々や空の写り込み、天気や時間帯によって変わる光の反射といったさらなるレイヤーが重ねられ、写真と外界の境は曖昧に溶け合っていく。写真を見ているつもりが、いつしか強い光に反射する水面の輝きを見ていたり、静かだった水面に噴水が上がって揺らぎ、はっとするなど「私たちは何を見ているのか」という感覚を、体感として強く揺さぶられる展示となっている。

噴水広場から東京藝術大学の方面に向かって歩くと右手側に現れるのが、スイス出身のアーティストユニット、タイヨ・オノラト&ニコ・クレブスの作品だ。今回展示されるのは、目に見えない謎の存在であるはずの「Ghost(霊)」をアイロニカルにとらえたシリーズ。人型のように見える白い残像は、実は電動ドリルの上に乗せた針金を高速回転させることで作り出され、カメラで撮影することによって初めて肉眼で見ることができる。「目に見えること」と「見えないこと」をダイレクトに問いかけている。

タイヨ・オノラト&ニコ・クレブスの展示作品

タイヨ・オノラト&ニコ・クレブスの展示作品

T3フォトフェスティバルの見どころのひとつに、建築家の平井政俊によって作品のロケーションから展示方法までデザインされている点がある。この「Ghost」の展示について、平井は「存在感」を強く意識したという。「展示する場所に関しては、等身大のような大きなサイズで展示ができ、かつ周囲の林に溶け込む場所を選びました。さらに木に囲まれていながら、空が抜けている場所というのもポイントです。ほかの作品とは異なる、あえて光を透過する素材にプリントすることで、日の光の差す方向によって『Ghost』の浮かび上がり方、存在感が変わるような企みをしました。本展の多くの展示の構造体に竹を使用していますが、ここでは割った竹を使うことで、風が吹いた時に揺れやすくなり、写真の中で起きている回転とは異なる動きが起こるようにしています」。本展で構造体に竹材を使用していることは、150年前、上野公園が寛永寺というお寺だった時代に、この場所が多くの竹が生えていた土地であったことに由来している。展覧会テーマである「見えない地層」を、土地の歴史というフィルターで考えるための装置のひとつだ。

T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO

  • Vol.2

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    見えない事象を視覚化する日本人写真家たち

  • Vol.3

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    上野から谷中へ、土地を巡りながら写真と出会う

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