3 July 2017

Dayanita Singh, Museum Bhavan

「ダヤニータ・シン インドの大きな家の美術館」展
有機的な「ミュージアム」からつくられる生きた写真

3 July 2017

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『ダヤニータ・シン インドの大きな家の美術館』展、有機的な「ミュージアム」からつくられる生きた写真 | ミュージアム・オブ・チャンス

〈ミュージアム・オブ・チャンス〉2013年 2つのチーク材構造物、アーカイバル・ピグメント・プリント From〈Museum of Chance〉2013, Archival pigment print

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いま世界で最も活躍する写真家のひとりとして知られるインド出身の写真家、ダヤニータ・シン。フォトジャーナリストを出自とし、インドを被写体に選んだ彼女の作品は極めて多様なテーマと結びついている。なかでも彼女が制作した「ミュージアム」なる特殊な作品は、従来の美術館やキュレーターに問題をつきつけ、美術館の概念を解体してしまった。彼女が生み出す展示空間は有機的であり、極めて現代的なものだった。

文=石神俊大

東京都写真美術館で『ダヤニータ・シン インドの大きな家の美術館』展が7月17日まで開催されている。フォトジャーナリストとしてキャリアを重ねてからアーティストへと転身したインド出身の女性写真家、ダヤニータ・シン。ヴェネツィア・ビエンナーレやシドニー・ビエンナーレなど国際展への参加を重ねるほか、2013年にロンドンのヘイワード・ギャラリーで開催された『Go Away Closer』展はフランクフルト現代美術館に巡回するなど、近年は世界的に活躍している。シンの作品展示はプリントだけでなくインスタレーション、スライドなど複数の形式をとっているが、同じ空間で異なる形式の作品を展示するのは今回が初めての試みとなるという。

シンの作品は極めて多様なテーマと結びついている。ジェンダーやセクシャリティ、格差といった観点からとらえられる作品もあれば、美術館の制度や鑑賞のあり方、作品という概念を問い直すような作品もある。そこには欧米や日本の人々がある種無意識的に求めてしまう「猥雑」で「ヴィヴィッド」なインドの姿はない。世間が求めるステレオタイプなインドに疑問を覚えたことから作品制作を始めた彼女の写真の多くはモノクロであり、ときに極めて静謐だ。

ジェンダーやセクシャリティといった観点から彼女の作品を考える場合、恐らく真っ先に名前が挙がるのは『マイセルフ・モナ・アハメド』(1989〜2000年)だろう。それはインドにおいて「第3の性」と呼ばれるユーナック(去勢された男性の意)であるモナ・アハメドを長きにわたりとらえた作品だ。最初は取材対象とフォトグラファーという関係だったモナとシンであったが、撮影を続けるにつれて打ち解けていき、二人は親友とも呼べる関係を築きあげた。

マイセルフ・モナ・アハメド

〈マイセルフ・モナ・アハメド〉より 1989 – 2000年 ゼラチン・シルバー・プリント 東京都写真美術館蔵 From 1989 – 2000, gelatin silver print, collection of Tokyo Photographic Art Museum

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