T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO

新緑の上野で、写真を通して見えないものを可視化する「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO」レポート

AREA

東京

山本渉の展示作品

山本渉の展示作品

自然をテーマに制作を行う山本渉の「光の葉」は、クスノキが密集したエリアに、木と同一化するように展示されていた。山本が上野公園で採集した、あらゆる成長段階の葉に高電圧をかけることで発生する、「コロナ放電」の現象をフィルムに定着した作品。「キルリアン写真」と呼ばれるこの手法で、あえてところどころ写らない部分が発生した“失敗”とされる写真を作品としている。「自然に存在するものに人間が手を加えることで、“あるはずのものが見えなくなる”現象を提示しています」と小高は解説する。

山本は今作についてこう語る。「この技法では葉の厚さや水分量に反応して画像が生成されます。通常の写真は面で捉えられ、厚みの描写がない2Dの媒体ですが、この作品では内部の情報が視覚化されています。作品を展示するにあたっては、平面性を強調することにこだわりました。平面を身体的に感じられるように、どう展示するかを平井さんと模索した結果が、アクリルにマットな黒いシートを貼り付けるという方法でした。アクリルは時に透過し、時に反射して、結果として額の役割を果たしています。木に括りつけたのは、保存樹木につけられている名前や品種が書かれたプレートをイメージしました。カブトムシを捕りに行くような感覚で見てもらえたら嬉しいです」

武田慎平の展示作品

武田慎平の展示作品

上野公園を出て東京藝術大学の前を通り抜け、谷中方面へ歩くと見えてくる日本家屋が、第二の会場・市田邸だ。築100年を超えるこの家は、現在芸術文化活動の拠点として活用されている。庭の飛び石の上にところどころ桐の箱が置かれており、その蓋をそっと開けると、中に武田慎平の作品「Trace」がある。福島県出身の武田によるこの作品は、福島第一原発事故によって汚染された土壌サンプルを箱の中のフィルムの上に置き、一カ月間感光させるという手法で制作されている。放射能物質を含有した土と感光材が化学反応を起こした部分が白く浮かび上がり、発光した天体写真のような像を結んでいる。桐箱の蓋の裏には、どこで採取された土壌サンプルかなどの情報が刻印されている。庭の自然の中に配置することで、写真作品を再び物質化するという試みがなされ、作品を再び箱に収める行為は、土壌サンプルを感光させる時のプロセスを追体験する意味合いも込められている。

武田慎平の展示作品。桐箱の蓋の裏には、サンプリングの情報が刻印されている。

武田慎平の展示作品。桐箱の蓋の裏には、サンプリングの情報が刻印されている。

市田邸の中にも、歴史上の人物の眼鏡を通して彼らの原稿や手紙をとらえる米田知子の作品と、同時開催されている東京国際写真コンペティションのグランプリ受賞者ベネディクテ・ヴァンダレートの作品が展示されている。米田の作品は上野公園内にも展示されているが、市田邸のほの暗く狭い蔵で作家の作品と静かに向き合う時間は、屋外で作品を見る時間とはまた違ったコントラストがあり、改めて写真と、それを見る環境の関係性の面白さを体感できる。ぜひ両方の出会い方を体験してほしい。