Interview
Kazuma Obara

物語を「語る」写真集はいかにして生まれたのか?小原一真の創作の原点を追うロングインタヴュー【後編】

『Exposure』の電車のシリーズを一冊に作るまでのダミーブックの数々。

『Exposure』の電車のシリーズを一冊に作るまでのダミーブックの数々。

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―撮影前に、頭の中でどういうイメージを撮りたいかができあがってしまうと、そこから逃げられなくなる。70年代には森山大道さんたちも問題にしていましたが、写真家は模索しているんですよね

僕もノーファインダーで撮ることがあります。イメージしてしまうと本当につまらない写真になってしまうから、風景を撮るときはノーファインダーでただシャッターを切ったり。この電車のシリーズではダミーブックを18冊位作ったのですが、あるとき人から『RFK Funeral Train』という写真集を教えてもらって、横長のフォーマットが気に入って、当初はそのまま採用したりもしていました。でも少しやり過ぎたなと思って横幅を短くしたり、いろいろ試してきたんですよね。

福島、チェルノブイリと、写真家として僕は原発作業員の問題にこだわってはいますが、変な議論を巻き起こしたくないと思っています。原発はなくなった方がいいとはもちろん思っているものの、日本では議論が成り立たず、感情論になってしまうことが多々あります。例えば僕が反原発だと思われたら、推進派の人は僕のものを受け取ってくれなかったりします。自分の仕事が建設的でない議論を呼び起こすものにはなって欲しくなかった。作業員のことを守るためにも。それに収束作業は原発を推進してもしなくても、すべての人間にとって必要なことだと思うんですよ。

Interview Kazuma Obara

―ノンポリでやろうとしても、撮っているだけで政治的な部分が立ってくる。

そうなんですよ、だから自分の立ち位置には気をつけていましたし、自分の本がプロパガンダになってはいけないとは思っていました。

―最初から写真集を想定して作品を作るのは、なぜでしょうか。

ダミーブックを作る過程は、自分の視野から除外しがちなものに目を向けるきっかけやアイディアをくれます。その要素がプロジェクトをより良い形に発展させるので、写真集という媒体を選んでいるんです。写真を撮る際には、視覚化できる、もしくは絵として人を引きつけるものを被写体として選ぶことが多いですが、写真的にはうまく機能してなくても、写真集の中では存在感や素材感を放つ一枚として重要なピースになる写真というものがあるんです。

―写真のエンターテイメント性についてどう考えているか教えてもらえますか?

あってはいいと思いますが、大事なのはバランスの問題だと思うんです。日本の本屋さんでは、動物や風景を扱うような写真集ばかりで、たとえば、イギリスの書店「ウォーターストーン」にあるようなアートの写真集は並んでいない。イギリスでは、アートはある程度社会的にコミットメントしているものでなければ評価されないというコミュニティが存在していました。

―エンターテイメントは低俗だと思われがちですが、サービス精神がないと届けたいメッセージも届かなくなるんですよね。だから小原さんの作品にも、ある程度のエンターテイメント性があると思うんです。

日本に帰ってきてから、この国は他者に対して不寛容でどうしてこんなに冷たいんだろうと思うようになりました。特に子供と一緒にいるときに感じます。だからこそ『Silent Histories』でも、できるだけ他者に対して想像力を持って接することを、ストーリーを通して与えたいと考えていました。『Exposure』もそうですが、目に見えないけれども本を通して想像力を喚起する方法を、自分の中で模索しています。それがエンターテイメントや、ストーリーテーリングにつながっていくのかもしれません。

小原一真

小原一真|Kazuma Obara
1985年、岩手県生まれ。2012年に写真集『Reset Beyond Fukushima』をLars Muller Publisherから出版。2014年に『Silent Histories』を手製写真集として自費出版。同写真集は『TIME』『Telegraph』「Lens Culture」などさまざまなメディアでその年のベストブックに選ばれる。同写真集は2015年に普及版としてEditorial RMより1900部出版される。2015年にロンドン芸術大学Photojournalism and Documentary Photography修士課程修了。World Press Photo 2015 People部門にて「Exposure」が1位に選ばれる。現在、小原一真と赤阪友昭によるドキュメンタリー写真のための長期ワークショップ「Regarding of the pain of others」の受講者を募集中(2月15日締切)。

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