4月27日より表参道ヒルズのスペース オーで写真展「君の住む街」を開催中の奥山由之。いまの東京のシーンを体現する瑞々しい感性で、昨今さまざまなジャンルから絶大な支持を得る奥山だが、本展では雑誌『EYE SCREAM』誌にて好評を博した連載を一挙公開するとともに、東京の街並みを独自の感性で新たに撮り下ろした作品が展示される。ポラロイドカメラで撮影された35人の女性たちと、移り変わる東京の姿。“間(あいだ)”が自身の写真の重要なキーワードだという奥山に、話を聞いた。
インタヴュー・文=IMA、小林祐美子
写真=高橋マナミ
―まず、本シリーズの連載が始まるきっかけを教えてもらえますか?
連載のお話をいただいて、最初に考えたのが東京の景色を撮りたいということでした。都内を散歩していると、なぜか部分的に大量のガードレールが捨ててあったり、異常に細い道が残っていたり、後から駐車場が出来て変なところに木が立っていたり、街の成長と共に無理が生じている場所に目がいくんです。現在と過去という時間の狭間で、不思議な歪みが生まれている。そういった風景が僕にとっての東京であって、それをひとつのテーマに据えたいと思いました。そんな話をしたとき、雑誌の特色とも組み合わせて「東京の街と東京の女の子」というキーワードが編集部から出てきたんです。そこで、被写体の方と一緒に都内を散歩しながら写真を撮るという企画になりました。
―被写体と撮影場所はどのように選んでいったのでしょう。
被写体の方は僕が選ばせて頂いていて、その人に合う場所を、東京を歩き回りながら探しました。「この人は実家暮らしで渋谷」とか「この人は一人暮らしで代々木」とか想像を膨らませて、その人がその街に住んでいるという気持ちで見られる写真にしようと意識しました。
―プライベートのような雰囲気で撮られていますが、そのために何か工夫はされましたか?
取材写真ではなく「君の住む街」という設定があることで、ある種の演じが入ると思います。普段のリラックスした表情を撮るために、少し変わった行動をしてもらって、一旦緊張を和らげる。その行動の合間や途中を断片的に撮っていることが多いです。こちらがお願いした行動や表情の頂点に達したとき、人は目的を達成した故の“点”になってしまって、それで終わり、固まるといったイメージになるんですね。その”点”を外れた”線”の部分にこそ、人間らしさが出る。そこをとらえているかとらえていないかが、表現であるか否かだと思っています。もっというと写真であるか画像であるかの違いでもあると思います。
―スタイリングのイメージなども含めて、奥山さんがアイデアを出したのでしょうか?
スタイリストの方には「この人がこういう色のイメージになるといいと思います」という伝え方をしました。「この人は黒ではない、でも白でもないから、青か黄色かな」とか。それはその色の服を持ってきて欲しいということでもなく、最終的にそのイメージになればいい、というお話を事前にしていました。
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限られた時間だからこそ生まれる被写体との距離感
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