2016パリフォト、完全復活!
「BEYOND2020」のレセプション翌日の9日(水)、2016年のパリフォトが一般公開に先駆けて開幕した。昨年はテロの勃発により、週末の開催が急遽中止になったが、この世界最大の写真フェアは今年、ついに20周年の節目の年を迎えた。例年通り会場となったグランパレには、世界中から一流ギャラリー、出版社、書店などが集結。各ブースでは、競い合うように旬のアーティストの新作や稀少なヴィンテージの作品をところ狭しと展示し、それを求めるコレクターや評論家、美術館のキュレーターなど写真関係者が一斉に集まる。目の肥えた画商と客とが繰り広げる丁々発止のやりとり、これがいつものパリフォトの光景だ。
昨年、ディレクターが交代し、より商業的になったという見方もあるものの(実際にパリフォトの目玉ともいうべき人気展示のひとつであった「The Paris Photo-Aperture Photo Book Award」のノミネート写真集の展示は脇に追いやられ、さらにパブリッシャーブースは規模を縮小、ギャラリーブースのスペースを増やして、売り上げ増を図っているともいわれている)、一方では新たな試みも推進されている。
それが「PRISM」と呼ばれる展示エリア。各ギャラリーが「売りたい」作品をランダムに持ち込むフェアのメインブースとは一線を画し、2FのかつてはVIPラウンジだった場所を開放したこのプロジェクトでは、選ばれたいくつかのギャラリーが、大判のフォーマットであったり、膨大な写真群によるシリーズであったり、インスタレーションであったりする特別な展示を行うもの。目的として、キュレーターやコレクターに新しい見方を提示することを掲げている。
実際に覗いてみると、や ウィリアム・クラインのような巨匠の代表作を惜しみなく、膨大な物量でプレゼンテーションした見ごたえのある展示から、ダグラス・ゴードン、 須田一政、 ペネロペ・アンブリコのような『IMA』本誌で紹介してきたカッティングエッジな作家たちのユニークで斬新なインスタレーションまで、大胆かつ巧妙な展示に圧倒される。これらの作品はほとんどがインスタレーション丸ごとの販売なので、購入できるのは相当のコレクターか美術館クラスに限られるだろう。「PRISM」ブースの隣には、ポンピドゥー・センターが収蔵する写真作品をテーマごとに展示した「The Pencil of Culture」も。ここではブラッサイから、リチャード・アヴェドン、そしてヴォルフガング・ティルマンスまで、厳選され珠玉の作品が集う。このように、ちょっとした美術館のようなスケールの展示が楽しめる仕掛けは、新しいパリフォトの大きな魅力のひとつになっている。ここでは、一般人は「買う」ことは忘れて純粋に楽しむべし。 ノエミー・ゴーダル
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今年のギャラリー出展作品の傾向は?
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。