台頭する東アジアの写真シーン

Vol.1 中国編

2016年、北京の三影堂撮影芸術中心で開かれたグループ展でのインスタレーション。

2016年、北京の三影堂撮影芸術中心で開かれたグループ展でのインスタレーション。

ここからは、前述のアワードのグランプリやショートリストにノミネートされた写真家デュオ2組を紹介する。

まずは、昨年の三影堂撮影賞を受賞したデュオ、上海出身のラム・ポク・イン・ジェフ(1988年生まれ)とシンガポール出身のチョン・ウン(1987年生まれ)。母国ではなく海外で写真を学ぶことを選択し、英国のロンドン・カレッジ・オブ・コミュニケーションで出会った二人は、写真、彫刻、インスタレーション、パフォーマンスなど幅広いメディアを用いたコンセプチュアルな作風で知られる。受賞作「The Untimely Apparatus of Two Amateur Photographers(二人のアマチュア写真家の時機を失した装置)」では、誰でも簡単に目の前の「現実」を「写真」に変換することができる現代において、日用品を使ってアナログカメラを作り、イメージ生成のための装置、方法論、そしてプロセスをユニークな視点で探求している。

近年、中国では欧米で写真を学ぶ若い世代が増加傾向にあり、インもその一人であった。「香港大学で建築を学んだ後、2011年に写真の道に進むことを志しました。その頃の香港には、趣味で写真を撮る人たちに向けてテクニックを教えるワークショップは多く存在していたのですが、写真学科のある大学はありませんでした。まだアカデミックなアプローチを通した写真との関り方は根付いておらず、現代写真についての議論も盛んではありませんでした」という。一方、ウンがシンガポールから留学した理由は、「何を得ることができるのか、未知数だったからでしょうか。新しい考え方を身に付けたいと思っていたので、母国を離れることを選びました」。作品にアジアっぽさが色濃く現れていないのは、二人のそういったバックグラウンドも影響しているといえるだろう。

Bird Hunting with Tele-Pinhole Camera, Excursion #5 2015 © Lam Pok Yin Jeff & Chong Ng

Bird Hunting with Tele-Pinhole Camera, Excursion #5 2015 © Lam Pok Yin Jeff & Chong Ng

globalnews-20170406the-rise-of-east-asian-photography-china_28

Results from Bird Hunting Excursion #2, 2015 © Lam Pok Yin Jeff & Chong Ng

学生時代、ほかのクラスメイトとともに共同生活をしていた二人は、オープンに議論を交わす中で自然とデュオを結成した。あるとき、1.5メートルの厚紙筒がシェアハウスに届き、望遠レンズ付きのピンホールカメラを作ろうと思いたったという。素人が試行錯誤して作ったカメラを持参し、ロンドン郊外の公園へと出かけ、トレンドに対する遊び心溢れる風刺として、当時ヒップスターの間で流行していたバードウォッチングを試みた。カメラの制作過程や撮影の様子をドキュメントした写真、手作りピンホールカメラを使って撮った景色や鳥、人々、そしてカメラそのものなどが作品の一部となる。そのほかにも、スライドプロジェクターやデジタル時計などの日用品を使って像を写し出す構造にカスタムし、さまざまな実験を試みている。

The Untimely Apparatus

The Untimely Apparatus, 2015 © Lam Pok Yin Jeff & Chong Ng

デジタル世代である二人に、なぜアナログカメラをテーマにしたのか尋ねると、「写真を見るのに飽き始めていたので、メディアそのものに目を向けました。アナログに対するノスタルジアなどではなく、手に入りやすく、フレキシブルで、安価なものを使ってアプローチしたかった」とウン。また、インは「テクノロジーの進化によって写真が民主化したことは、アート写真における新たな物語の誕生の妨げになっている」と続ける。人々はカメラがどのようにプログラムされ、動作し、イメージが作られているかを考えなくなり、市場でカメラを選んだ時点である程度の制限が生まれていることにも気付かない現代社会に、本作は「写真とイメージ生成のプロセスの関係性への無関心に対するアンチテーゼ」を掲げている。アジア出身の若きデュオによる、ウィットに富んだ現代写真への批評的アプローチに今後も期待したい。

Recommend Posts