Dialogue
Laura Israel × Katsumi Omori

対話 ローラ・イスラエル×大森克己
ロバート・フランクが人生を通して語りかけること

Photo of Robert Frank by Lisa Rinzler, copyright Assemblage Films LLC

Photo of Robert Frank by Lisa Rinzler, copyright Assemblage Films LLC

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映画『Don’t Blink ロバート・フランクの写した時代』は、インタビュー嫌いで知られるフランクが、自身の人生を初めて語ったドキュメンタリー。1947年に23歳で単身スイスからニューヨークへわたり、1958年に出版した『The Americans』は、いまや世界で最も有名な写真集となったのは周知の事実だろう。写真界の寵児となりながらも、過酷な運命に翻弄されたフランク。本作はそんな人生の中にも生きることに悦びを見つけ、作品を刻み続けた偉大なる“アメリカの異邦人”から次世代へ贈るメッセージでもあるのだ。監督は長年フランクの映像作品の編集を担当し、全幅の信頼を寄せられているローラ・イスラエル。ここではイスラエルと写真家の大森克己の対話を通して、瞬きもせず時代を切り開いてきたフランクの姿を、本作から読み解いていく。

文=IMA
写真=浜田啓子

大森克己(以下“大森”):初めまして。実は僕、24年前にフランクさんにお会いしたことことがあるんです。キヤノン写真新世紀の審査のために来日した彼が、僕をロバート・フランク賞に選んでくれたんです。これが1994年当時の写真で、荒木経惟さんがお宅で開催したプライヴェートな集いに僕も呼んで下さって。その時に撮った一枚です(写真下)。

ローラ・イスラエル(以下“イスラエル”):すごい!私と出会った頃のロバートはこういう雰囲気でした。

Laura Israel × Katsumi Omori

大森:今回の映画はとても面白かったです。ロバート・フランクのドキュメンタリーなんですが、イスラエルさんが外側から観察しているんじゃなくて、ロバート・フランクの内側にいるというか、仲間の視点で彼をとらえているのがとても新鮮でした。

イスラエル:まさにそういうことがしたかったのです。

大森:まるで彼の写真集 『THE LINES OF MY HAND』(*註)が動いているようでした。

イスラエル:とても素晴らしい表現!

Laura Israel × Katsumi Omori

大森:最初の始まりは、ニュー・オーダーのPV「RUN」(1989年)を、イスラエルさんが編集されたことがきっかけですよね?どのように知り合ったのでしょうか?

イスラエル:近所に住んでいたので、彼のパートナーのジューンとも友達になって、よく会っていました。もうひとつは二人とも絵はがきのコレクターだったこと。1920年のフラミンゴの絵がかかれたスイスの絵はがきがあって、家を通るときにロバートにメッセージを書いてポストに投函しておいたんです。それから交換が始まって、いまでも絵はがきを送り合っています。彼との作業は私にとっても特殊な進め方で、まずロバートは私に写真集をくれて、「これから編集してもらうものは僕の非常に個人的なものだから、僕のことを知って欲しい」と、彼から打ち解けてくれたんです。

Laura Israel × Katsumi Omori

「RUN」の制作のとき、当時はビデオカセットの時代ですから、巻き戻し先送りっていう作業があります。私がロバートに「また戻ってやり直すかとか、もう一度見てみる作業をする?」って聞いたら「いや、巻き戻しはしない、先送りのみだ」って、躊躇しない。決めたらそれだっていう決断力。私もそれは理想としているところですね。

大森:じゃあそれがコラボレーションの始まりですね。

イスラエル:ニュー・オーダーのライブを撮影するときに、オープニングアクトが元セックス・ピストルズのジョン・ライドンだったんです。でもロバートはそもそもジョンのこと知らなかったんですよね。それなのにあまりに彼に魅せられて、撮ったカットがジョン・ライドンばっかりで、ニュー・オーダーが少ししか写ってなかったという面白い逸話がありましたね。

大森:フランクさんらしいですね。パティ・スミスのPV「Summer Cannibals」(1996年)は僕の好きな映像のひとつです。普通のプロモーションビデオとは手触りが違ってとても印象的でした。あれはフランクさんの家ですよね?

イスラエル:地下ですね。35mmで撮ったPVで、一日かけて、2、3時間撮っていました。

大森:あそこにあるものはロバート・フランクのものだってことですよね。

イスラエル:そこがロバートのすごいところ!アートディレクションは彼がすでにやっているからいらないんですよ。私の撮影監督がちょっと何かしようとすると、「やらないで」「まっすぐに整えないで」って。

大森:面白いですね。それでどんどん作品の編集をされるようになって、関係性も深まっていったと思うんですけど……。

イスラエル:彼の映画「The Present」(1996年)を長い間撮っていたのが、ダイアリー形式だったので、かなりの素材になったと思います。「The Present」を通して、私たちはすごく仲良くなったと思いますね。

*註1
『THE LINES OF MY HAND』:初版『私の手の詩(The Lines of My Hand)』は1972年に邑元舎から刊行。『The Americans』以前に撮られたフランクの初期作品を中心にまとめられた、自伝的写真集。以後、さまざまなエディションが発行されている。

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