21 April 2017

Dialogue
Laura Israel × Katsumi Omori

対話 ローラ・イスラエル×大森克己
ロバート・フランクが人生を通して語りかけること

21 April 2017

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ローラ・イスラエル×大森克己「ロバート・フランクが人生を通して語りかけること」 | Photo of Robert Frank by Lisa Rinzler, copyright Assemblage Films LLC

Photo of Robert Frank by Lisa Rinzler, copyright Assemblage Films LLC

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大森:キャリアの最初の頃は写真を撮っていたフランクさんが、後半、映像制作にシフトしていきますよね。写真に関しては映画の中で「金はなくとも写真には自信があった」っていい切る。でも映画について語るときはちょっと曖昧ですよね。例えばニューヨーク大学のインタビューで「私の映画は万人受けするような内容じゃない」って答えたり。彼にとって、写真と映画は地続きだけれど、そのモチベーションは少し違うだろうし、映像は知らない道を地図なく進んでいる感じがより深く滲み出ているように思います。しかもこれは偶然ですが、彼の実人生の中で二人のお子さんを亡くすことと、映画製作が強く結びついていると思うんですね。

イスラエル:写真家だと隠れて、ハンターみたいな作業だけど、映画作るのが好きなのは一人じゃない、ほかの人と共同作業だからといっていました。撮っている人たちから触発されて、さらに何か違うものになって、お互いに得るものがある。アレン・ギンズバーグを始めとするビート世代の詩人・ミュージシャンと接することによって、それを楽しんでいたと思うんです。ロバートのいまのパートナー、ジューンは画家ですが、彼女が与える影響も大きいと思いますね。

大森:映画の途中で、娘さんと息子さんとの会話のシーンがありますよね。ものすごく切ない。

イスラエル:あのシーンはロバートがすごく正直に子どもに接していますよね。

大森:僕、思わず画面をキャプチャーしてしまったんですけど……。このシーンが「Don’t Blink」の分岐点かなと思って。

Laura Israel × Katsumi Omori

イスラエル:本当にそうだと思います。

大森:『The Americans』を撮ったときは、若者が前へ前へということで本当に怖いものがなかったけれど、この時の彼は、失う何かを持ってしまっていて、その後の現実生活において娘さんや息子さんはいなくなってしまう。そこに芸術と人生の大変なせめぎあいを感じました。

イスラエル:そうですよね。「Don’t Blink」をほかの人と見ると、急にその分岐点とおっしゃった部分で、観る人が前のめりになるんですよ。訴えかけてくるものが変化してくるんですね。

大森:誰もが偉大なアーティストであることは知っているんだけど、あのシーンはロバートが身近に感じられた瞬間であり、また彼の孤独の渕を覗いてしまうやるせなさでもありました。

イスラエル:私もそれをとらえることができてよかったなと思います。ロバートから学んだことについて、映画を撮りながらも考えていたんですね。以前、私が若い人に教えるときに何を伝えてればいいのかと相談したら、「その人の隣に座っていることが一番学ぶことだよ」っていってくれたんです。それで気付いたんです。私はずっと彼の隣に座っていて、まさに彼が人生の師だったと。作家としての面だけじゃなくて、人間としていかに彼から学んだか。この映画がそれを証明しています。観る人には彼の隣に座っているかのような感覚を味わって欲しいと思って、こういう映画のスタイルになりました。

Laura Israel × Katsumi Omori

タイトル

『Don’t Blink ロバート・フランクの写した時代』

公開

2017年4月29 日(土・祝)より、Bunkamura ル・シネマほか全国順次公開

URL

http://robertfrank-movie.jp/

ローラ・イスラエル|Laura Israel
米国ニュージャージー州で生まれ、10代の頃からNYのロウアーイースト地区へ写真を撮りに行っていた。ニューヨーク大学在学中からコマーシャルやミュージックビデオの編集で数々の賞を受賞し、大学卒業と同時に自らの会社 Assemblage を設立。制作した主なミュージシャンは、ジョン・ルーリー、ルー・リード、パティ・スミス、キース・リチャーズ、ソニック・ユース、ニュー・オーダー、ジギー・マーリー、デヴィッド・バーン、アーティストではウィリアム・ウェグマン、ローリー・シモンズ、そしてロバート・フランク。2010年に初の長編ドキュメンタリー映画『Windfall』を監督し、トロント国際映画祭でプレミア上映、Docs NYCでトッププライズを受賞。毎年「フィルムメーカー」誌が選ぶ「インディペンデント映画の注目すべき25人」の一人に選ばれている。

大森克己|Katsumi Omori
1963年神戸生まれ。1994年キヤノン写真新世紀優秀賞受賞。国内外での写真展や写真集を通じて作品を発表。2013年グループ展「日本の新進作家vol.12 路上から世界を変えていく」(東京都写真美術館)に参加。2014年個展「sounds and things」(MEM)を開催。代表的な写真集に『サルサ・ガムテープ』(リトルモア/1998年)、『encounter』(マッチアンドカンパニー/2005年)、『サナヨラ』(愛育社/2006年)、『Cherryblossoms』(リトルモア/2007年)、 『STARS AND STRIPES』(マッチアンドカンパニー/2009年)、『incarnation』(マッチアンドカンパニー/2009年)、『すべては初めて起こる』(マッチアンドカンパニー/2011年)など。

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