Event Report
Lieko Shiga

写真は目にしか見えないのか 志賀理江子「Blind Date」

AREA

東京都/香川県

Blind Date

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写真集制作は作家にとって数年に一度作れるご褒美のようなもので、インディペンデントなメディアとして一人歩きする、希望そのものです。展覧会場にプリントは約18点しかないので、写真集と展示は全く別ものにしようというプランがありました。写真集作りで一番大事なのは紙であり、どう持ち手にめくられるかが重要だと、今回痛感しました。バンコクの湿った空気で電話帳をめくるように、中は水のようなものとして考えたいとデザイナーの森大志郎さんに伝えて、ぐにゃぐにゃとして自立しない紙と造本にしました。

最初はただ顔が並んだ彼氏彼女のアルバムでしかなかったものを、「彼女たちが何を見ているのか」という問いを読者が持てるようにするにはどう扱えばいいのかを考える間、編集作業はだいぶ頓挫していました。そして最終的に、どれだけ写真がトリミングされようとも、彼らの目の中心をページの真ん中に持ってくることによって、目と目を引き剥がすような、ずっとあなたを見ているという状態を作れるのではないかと思い至りました。ページによってはピントの合った場所がトリミングされた外にあって、どこにも焦点が合っていない写真もあります。すると人は、自分が何を見ているかわからなくなる。印刷所の人もどこに印刷のポイントを持ってくればいいかわかりづらくて戸惑っていたそうです。

「Blind Date」で彼女たちが見つめていたものは私ではないと気付くのに何年もかかりました。何を見ているのかという問いは自分自身にも返ってきます。これまでの作品には明らかに対象がありましたが、「Blind Date」では彼女たちが対象でありながら、自分と向きあわざるをえなかった。そういう意味でとてもハードな作品でした。

© Lieko Shiga

© Lieko Shiga

展覧会場の中にはプロジェクターと写真だけで言葉は一切持ち込まないのですが、会場を出た通路の壁面に5つのテーマで書いた言葉を展示しています。ブラインドデート、弔いについてのアンケート、亡霊、現実、そして歌、以上の5つです。今までは、作品をどうとらえるかについて扉を開け放つように書くことがいいと思っていましたが、いまはより具体的に踏み込んで書くことが大事に思えています。写真と言葉は全く別だけれど、展覧会場では等しく扱いたいと思っています。

いま、ひとりで写真を撮ることが難しくなってきていて、写真の意味が私の中で大いに変わりつつあります。この3か月の展覧会を通して私がやりたいことは、自分の考えが少しでも変わるように学ぶ場にすること。なんとなく写真を撮っているだけでは絶対に「歌」に近づけない、もっと具体的に細やかな学びをしなければいけないと思っています。みやぎ民話の会という、民話を採訪し、それらにどんな意味があるのかを考え続けている会があって、平均年齢70歳くらいの彼女たちはそれを命尽きるまでの仕事としてやっているんです。その方たちの活動に感銘を受け、ヒントを得ました。展覧会は激しくて、わーっとやって、尊いものが一瞬見えたかと思ってもまた日常に戻ってしまう。それをより尊いものにするために、生きている限り学ぶことを周りの人々と共にしていくことが、いま、何よりも大事だと思っています。

Blind Date

タイトル

「志賀理江子 ブラインドデート」

会期

2017年6月10日(土)~9月3日(日)

会場

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(香川県)

時間

10:00~18:00(入館は閉館の30分前まで)

観覧料

【一般】950(760)円【大学生】650(520)円*高校生以下または18歳未満・丸亀市内在住の65歳以上・各種障がい者手帳をお持ちの方は無料/( )内は前売りおよび20名以上の団体料金/同時開催常設展の観覧料含む/8月19日(土)、20日(日)は1階ゲートプラザにて「まるがめ婆娑羅まつり」開催のため観覧無料(当日は展示室内に音が響く場合あり)

URL

http://www.mimoca.org/ja/exhibitions/2017/06/10/1505/

タイトル

『Blind Date』

出版社

T&M Projects

価格

8,000円+tax

発行年

2017年

仕様

並製本 (特製函入)/364mm×257mm/100ページ

URL

https://www.tandmprojects.com/products/blind-date-by-lieko-shiga#

志賀理江子|Lieko Shiga
1980年、愛知県生まれ。2004年、ロンドン大学チェルシー・カレッジ・オブ・アート卒業(ファインアート、ニューメディア専攻)。2007-08年、文化庁芸術家在外研修にてイギリスに滞在。2008年、第33回木村伊兵衛写真賞受賞。

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