Talk
Eiki Mori × Toshimitsu Kokido

対談 森栄喜×小木戸利光
記憶・声・家族─写真家の眼差しの先にあるもの

Talk Eiki Mori × Toshimitsu Kokido

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森:本の中に小木戸くんのおじいちゃんたちが写っている写真があるけど、こんな古い写真残ってるんだね。

小木戸:すごいものを発見したなと思いました。亡くなった祖父母の家は、いまでも携帯電話が圏外になるような山の麓にあるのですが、箪笥を開けたところに古い立派なアルバムが出てきて、そこに写真がいくつも貼ってあったんです。

森:この時代にカメラを持っている人がいたのかな?誰かに頼んで撮ってもらったの?

Talk Eiki Mori × Toshimitsu Kokido

小木戸:母や親戚に尋ねてみたところ、どうやら親類の中に当時からアメリカにわたっていたようなハイカラなおじさんがいたらしくて、その人が多くを撮影したのではないかという話になりました。栄喜さんの写真も永く残っていくことでしょうから、栄喜さんのご家族やご親戚の未来の子どもたちも、きっと自然に栄喜さんの写真を発見するでしょうね。そこにどんな作用が生まれるのか、とても興味深いです。

森:僕も新作は家族について撮っているんですよ。

小木戸:新作はどのようなものなのですか?

森:40組くらいの家族や夫婦、カップルを撮影したシリーズで、すべての写真に僕も入り込んでいるんです。その中で僕だけが他人なんだけど、家族から服を借りたり、子どもと一緒に遊んで仲良くなったり、最大限家族の一員になろうとするんだけど、すごく難しくて。普通の家族に見える写真もあるけど、ちょっとした子どもの表情などで奇妙な揺らぎが発生することもある。血縁からイメージして写真を赤くしていたんだけど、自分の中にも血縁に縛られすぎている家族像や、固定観念が強くあると気づいて。いろんな家族と出会う中で、自分の想像以上に家族って進んでいたんだなと思って。

© Eiki Mori

© Eiki Mori

小木戸:「進んでいた」というのは、どういうことですか?

森:家族って結婚して一緒に暮らして子どもを育てるみたいなイメージを漠然と持っていたんだけど、そんなちっぽけなイメージに収まりきらない家族がいて、既にこの社会で暮らしていて。

小木戸:なるほど。栄喜さんがご自身のセクシャリティーも含めたところで、あらためて「家族」というものについて思いを巡らせながら、いわゆる血縁の家族の中だけでなく、血縁の家族の外でも生まれ、存在しうる人間的な親密性に纏わる何かを、写真を通して、提議してくれる。まだ見ぬ栄喜さんの新作について、いまそんなイメージを抱きました。「家族」というものについては、以前から考えていらしたんですか?

森:親になった友だちも多いし、僕の年齢で自分の父や母はもう僕を産んで育ててたんだなとぼんやり思ったり。でも、撮影を通じて僕も向こうの家族の中で生きているんだなって感じることがあって。撮影をしていると僕が思い出を得る一方だと思っていたんだけど、写真も渡しているから僕との記録も残っているし、撮影後も子どもと一緒に遊びに行ったり、関係性が更新され続けていて面白いなと思って。

小木戸:そこにもやはり栄喜さんの眼差しがあるんでしょうね。僕が家族について思いを巡らせながら見つめる何かとは、その視点が違うはずです。その人がその人であるための、その人だけが持つ、その人にしかない眼差しに触れるというのは、写真芸術を鑑賞することの醍醐味のひとつですね。

森:向こうの家族の記憶の中に自分が存在できうるってとても幸福なことだと思った。もちろん写真作品としても残りますが、いまは相手の記憶に残ることがむしろ望んでいたことだったのかもっていう思いすらあります。

小木戸:作品づくりを通して、「家族」と新たな経験を得て、何かを育まれたのですね。そして、その大事な共有された時間が、何かしらの形で、写真に刻まれているのでしょうね。栄喜さんの新作を、とても楽しみにしています。

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タイトル

『表現と息をしている』

著者

小木戸利光

出版社

而立書房

価格

1,900円+tax

発行年

2017年7月25日(火)

仕様

ハードカバー/196ページ

URL

http://jiritsushobo.co.jp/

小木戸利光|Toshimitsu Kokido
1981年福岡生まれ。英国ノーザンブリア大学にて演劇・パフォーマンスを専攻し、帰国後、tokyo blue weepsの歌い手として3枚のアルバムを発表する。俳優として、ドラマ、映画、舞台、ドキュメンタリー番組に出演するほか、身体表現によるパフォーマンスも行う。主な出演作に、NHKドラマ「あんとき、」(主演)、映画「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」(若松孝二監督)、「菊とギロチン」(瀬々敬久監督)、「飢えたライオン(仮題)」(緒方貴臣監督)がある。

森栄喜|Eiki Mori
1976年石川県金沢市生まれ。パーソンズ美術大学写真学科卒業。2009年、『CROWS AND PEARLS」をEdition Nordより発行。2011年、台湾の出版社レボリューション・スター・パブリッシングより『tokyo boy alone』を刊行。2013年に写真集『intimacy』(ナナロク社)で第39回木村伊兵衛賞を受賞。9月8日からKEN NAKAHASHIにて個展「Family Regained」を開催。今秋、ナナロク社より写真集『Family Regained』を刊行。

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