2 February 2017

Interview
Kazuma Obara

物語を「語る」写真集はいかにして生まれたのか?小原一真の創作の原点を追うロングインタヴュー【前編】

2 February 2017

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物語を「語る」写真集はいかにして生まれたのか?小原一真の創作の原点を追う【前編】 | Interview Kazuma Obara

―本を作る行為や工程に関する知識はどこから得たのでしょうか?次の『Silent Histories』では、初めて手作りの写真集を制作して、写真マーケットの権威ある賞といってよいParis Photo Aperture Photo Book AwardのFirst Photo Book Award(作家の処女作に与えられる賞)にノミネートされ、写真集では定評のあるメキシコの出版社Editorial RMから本になっている。すごいサクセスストーリーですよね。

本の制作は、キュレーターの後藤由美さんが主催するワークショップに参加して学びました。実は、『Reset Beyond Fukushima』を2012年に出版してから、作業員の問題について次にどうしたらいいのか分からなくなっていたんです。いわゆるドキュメンタリーのフォトジャーナリズムのスタイルに自分の中で限界を感じて、だんだん違う方向にシフトしていきました。

左がEditorial RMから出版された『Silent Histories』、右が手作りのファーストエディション。

左がEditorial RMから出版された『Silent Histories』、右が手作りのファーストエディション。

―何に限界を感じたのでしょうか?

自分が現場に行って撮影する方法だけでは、将来的な健康被害や、子供のいじめのような問題にアクセスできないことに気づきました。悩んでいたとき、後藤さんのワークショップに参加したのです。当時、僕は大阪に住んでいたのですが、大阪に暮らす第二次世界大戦の空襲の犠牲者のテーマに取り組み始めていました。ワークショップと並行しながら撮影し、教わった手法を生かして自分で編集・製本し、最終的にこういう形にできあがりました。

―この本の装丁や作り方について教えてもらえますか。

まずなぜこの本を作ったかですが、取材当時、被害者の人たちは国へ補償を求める裁判をしていたんです。僕が取材をしていた2013年頃は、最高裁が判決を出す前でした。取材する中で、僕はずっと犠牲者の方々に傷を撮らせてくださいとお願いしていたのですが、断られていたんです。まだ最高裁の判事にも、彼らは一度も傷を見せていなかった。それで、判決前のタイミングで裁判所に証拠として傷の写真を提出したいから、僕に傷の写真を撮っていいといってくれたんです。より意味のある形で提出するために、一冊の本を作ることになったんです。

―これらの写真は「証拠」という役割を与えられていたんですね。

そうです。自分で撮った写真のほかに、たとえば当時のプロパガンダ雑誌『写真週報』の空襲を特集した3号分を複製して挟み込んでいたりします。

『Silent Histories』に挟み込まれている『写真週報』のレプリカ

『Silent Histories』に挟み込まれている『写真週報』のレプリカ

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