Dayanita Singh, Museum Bhavan

「ダヤニータ・シン インドの大きな家の美術館」展
有機的な「ミュージアム」からつくられる生きた写真

ミュージアム・オブ・チャンス

〈ミュージアム・オブ・チャンス〉 2013年 アーカイバル・ピグメント・プリント 作家蔵 From〈Museum of Chance〉2013, Archival pigment print, collection of the Artist

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これまでにさまざまな「ミュージアム」がつくられてきたが、そのテーマも多岐にわたる。資料やファイルを保管するアーカイヴ施設を撮影した『ファイル・ミュージアム』(2012年)や、僧院で暮らす少女の姿をとらえた『リトル・レディーズ・ミュージアム──1961年から現在まで』(2013年)―前者は父が死んでから相続にまつわる夥しい量の書類に囲まれながら過ごしてきた経験、後者は幼い頃から写真好きの母親に写真を撮られ何冊ものアルバムをつくられた経験が影響を与えているように感じられる。同時に、それぞれのミュージアムは「タイポロジー」的な手法を想起させるだろう。

数あるミュージアムの中でも異彩を放つのが、『ミュージアム・オブ・チャンス』(2013年)だ。「作品全体を束ねているもの、みんなに共通していることを考えたら、わたしの場合は全てが偶然で繋がっているんじゃないかと思ったんです。わたしの生涯はずっとどこかに出かけていて、偶然の産物として色々な遭遇がありました」。本展の開催を記念した講演会で本作を制作した経緯を振り返り、シンはそう語った。ポートレイトや博物館の展示、映画の一場面の複写などさまざまな写真がまとめられた本作は、いわば多くのミュージアムの母体となるミュージアムだといえる。

ミュージアム・オブ・チャンス

〈ミュージアム・オブ・チャンス〉より 2013年 アーカイバル・ピグメント・プリント 作家蔵 From〈Museum of Chance〉2013, Archival pigment print, collection of the Artist

「ミュージアム」の魅力はその外観にもあるが、何より作品が常に入れ替わることにあるだろう。前述の通りそれは「生きている現役のアーティスト」を志すシンの姿勢の表れであり、変化し続ける作品をつくることで従来の展示制度を解体せんとする。それは同時に、現代における写真のあり方を反映したものでもあるとはいえやしまいか。無数の写真がコピペされ当初の文脈とは関係なく流通し、「ポスト・トゥルース」なる言葉さえまかり通る現代において、写真とはまさに「変化し続ける」ものなのだ。シンの作品がもつ有機性とは極めて現代的なものであり、それゆえに彼女は現役のアーティストであり続けるのである。

タイトル

総合開館20周年記念「ダヤニータ・シン インドの大きな家の美術館」

会期

2017年5月20日(土)~7月17日(月・祝)

会場

東京都写真美術館(東京都)

時間

10:00~18:00(木・金曜は20:00まで)*入館は閉館30分前まで

休館日

月曜(7月17日は開館)

入場料

【一般】800(640)円【学生】700(560)円【中高生・65歳以上】600(480)円*( )内は20名以上の団体料金/小学生以下、都内在住・在学の中学生および障害者手帳をお持ちの方とその介護者は無料/第3水曜日は65歳以上無料

URL

http://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-2778.html

ダヤニータ・シン|Dayanita Singh
1961年、ニューデリー生まれ。1980〜86年までアーメダバードの国立デザイン大学に学び、1987〜88年までニューヨークの 国際写真センター(ICP)でドキュメンタリー写真を学んだ。その後8年間にわたり、ボンベイのセックスワーカーや児童労働、貧困などのインドの社会問題を追いかけ、欧米の雑誌に掲載された。『ロンドン・タイムズ』で13年にわたりオールド・デリーを撮り続け、 『マイセルフ・モナ・アハメド』(2001年)として出版。1990年代後半にフォトジャーナリストとしての仕事を完全に辞め、インドの 富裕層やミドル・クラスへとテーマを転じた。ヴェネチア・ビエンナーレ(2011年、2013年)やシドニー・ビエンナーレ(2016年)など の数々の国際展に招聘されている。京都国立近代美術館と東京国立近代美術館の「映画をめぐる美術-マルセル・ブロータースから 始まる」展(2013~14年)に出品。

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