Talk
Masahiro Higashide × Satoshi Machiguchi × Masaru Tatsuki

新しい世界を“感じる”旅から生まれた、比類なきドキュメンタリー

鼎談 東出昌大×町口覚×田附勝

© Masaru Tatsuki

―町口さんは、東出さんに旅の間に日記を書くように依頼したそうですね。

町口:本番の撮影に行く前に、まず僕自身が感じようと思って、田附と僕と僕の助手と3人でロケハンに行ったんです。田附にいろんな場所に導かれて、人と出会って、自分自身の中で感じたけど、その時は感じても経験したことって意外に忘れちゃうんですよね。だからこれは書き留めるべきだなと思って。何か感じたものを身体化する作業が必要だと思ったので、東出くんには「日記を書いて」っていったんです。

東出:いつかやりたいと思いながら日記をつけてこなかったんですが、これまでも旅行中には日記をつけていたんです。今回それがどう化けるかわからないし、最終的に文章として採用されるかも定かではなかったんですけど、旅の初日にみなかみ町のホームセンターに寄って、スケッチブックと鉛筆を買って、手書きで日記をつけ始めました。

町口:毎夜、田附と何が撮れたかを宿でチェックしていたんですが、終盤になると、もう僕の頭の中で造本や編集の構成がある程度できてきて、デザイナーとしては早く帰って作業したくて仕方がなくなって(笑)。でも最終日に東出くんから預かった日記を読んでみると、それだけで充分素晴らしかったので、逆にこれを丸ごと本には入れられないなと思って悩みました。それでまずは田附の写真だけで構成したマケットを作って、「この中に東出くんの言葉をぶち込んで欲しい」とお願いしました。去年の年末に渡したんだよね。

鼎談 東出昌大×町口覚×田附勝

町口覚

東出:そうです。「これに言葉を入れて」っていわれたんですけど、日記は町口さんが持っていったまま返してくれてないんです(笑)。でもそれは日記を見返して書くってことじゃなくて、「旅はお前の血となり肉となっているから、身体化された言葉をこの写真に書け!」ってことだと思って、一から文章を書いていったんです。

町口:東出くん、センスあるよね(笑)。

東出:田附さんの写真を見て感じることと、現場で自分が感じたことをそのまま言葉にして、付箋になぐり書きしたものをページに貼っていきました。一旦寝かして3、4日経ってから振り返ってみようとしたんですけど、言葉を推敲して書き直すことで、まだ自分でもわかっていない問いに答えを出しちゃいけないなと思ったから、結局最初のなぐり書きのまま町口さんにお渡ししました。

町口:そうしたら日記よりも素晴らしいものがきたんですよ。これは東出くんが「感じる」っていうことを、完全に自分で身体化させたからなんです。東出くんがリリースに寄せた文章で、田附の写真を見るんじゃなくて「『読もう』としてみて下さい」って書いているけど、これがすべてだよね。マケットを渡されたときに、東出くんが写真を「読む」努力をしたからこの言葉が出てきたと思うんです。それと東出くんの付箋に書かれた言葉を見た時ときに、その写真の状況を説明している言葉があまり入ってないから、コイツやるなあ~と思いました(笑)。

―最初の猟でかかったイノシシは、解体作業までされていますね。

東出:殺めた後、数分は言葉が出なかったですね。2日目だったんですけど、猟師さんと2人で車に乗っていたら、その猟師さんが「俺も猟を辞めようと思うことあるよ」っていうので「なぜ?」と聞いたら、「殺し過ぎた」っていって、そのあと何もいわないんですよ。「ああ、殺めてしまった。これが抜け落ちていたんだ、自分の日常に」っていうことを、痛感するふりをしている自分にも気付くんです。そうなっていることは知っていたし、ただ考えてなかっただけなのに、「俺はいま初めてここで気づいたふりをしてるのか?」とか。この旅の間、どんどん自分は小さい存在だと感じるようになりましたね。

鼎談 東出昌大×町口覚×田附勝

―写真集の中の、「狭いところで生きている。生かされている。」という東出さんの言葉が印象的です。これはどういうところから出てきたものですか?

東出:ここで書いている言葉は漠然と走り書きしたものですけど、ひとつの言葉がいろんな意味を持っているんです。だからこうですとは説明したくないんですけど、僕が今29歳で忙しく働いていて、自分自身は比較的自由な職業や環境だと思っていたけど、全然そういうことじゃなくて社会ってものはガチガチにあるし……なんか、そういうことを思って書いた言葉ですね。

町口:僕はこの言葉を、本の中でニ度使っているんです。最初と最後では意味が違って読めるでしょ?

東出:こういう意味だと僕は明確に思って書いてないし、たぶん田附さんの写真も、答えはこれだと示してるんじゃなくて、「この先にあるのは何なんだ?」って提示していると思うんです。だから僕の言葉もそうやって漠然と受け入れてもらえれば嬉しいです。

東出昌大

© Masaru Tatsuki