Book Review
Viviane Sassen

ブックレヴュー『ROXANE II』ヴィヴィアン・サッセン
写真家、ヴィヴィアン・サッセンの新境地

ROXANE Ⅱ ヴィヴィアン・サッセン 写真集5

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しかしこのペインティングが示唆するのは身体的な、あるいはパフォーマンスの側面だけではない。ここで一度収録されている作品をパターンに分類してみる。A)ストレートに撮影された写真 B)体にペイントをした写真 C)ペイントした体を押し当てたペインティング作品 D)A~Cのプリント上にペインティングを施した写真。そもそも写真家が写真にペイントを施すこと自体は珍しいことではないが、ここではそれらのペインティングは例外なく最終的に写真に、もしくは本というメディアに還元されているという点に注目したい。

サッセンは自らをフォトグラファーではなくヴィジュアルアーティストと名乗っており、これまでにも映像を使用した作品やインスタレーション作品を制作している。そして本書で試みられていることは、それらの空間的表現とはある意味対極に位置づけられるだろう。ここではプリント、もしくは本という平面的で制限のあるメディアの特徴を受け入れた上で、新たな表現を行おうという作家の態度が伺える。先ほどのパターン分類からも分かるように、本作は実に多くのレイヤーを重ね合わせ、入れ子構造のような構成となっている。そして最終的なアウトプットの段階で、つまりそれらが全て「~の写真」に還元される限り、ペインティングのテクスチャーや絵の具の層は可視化されなくなる。レイヤーは統合され、平面化されるのだ。

ROXANE Ⅱ ヴィヴィアン・サッセン 写真集6

それらの写真に加え、過去の作品にもみられたような遠近法を活かした、奥行きを感じさせるストレートな写真がところどころに挿入される。これらを混在させることでレイヤーはさらに複雑化する。彩色という要素を用いつつ、あくまで平面性を意識させる点や、入れ子構造の外枠に写真の平面性を用いる本作はまた、これまでのサッセンの作品中最も写真らしい作品といえるのではないだろうか。単にメディウムのマテリアリティーに言及し、写真のための写真というようなアブストラクションに向かうのではなく、また本という形態の物質性を過剰に強調するわけでもなく、メディアのもつ制限と向き合った上で新たな表現を模索した作家の姿勢は評価されるべきだろうし、本作は今後の写真家たちの指標の一つにもなりうるだろう。

そして本作における3人目のコラボレーター、インディペンデント出版社「oodee」(オーディー)の存在も忘れてはいけない。これまで『ROXANE』シリーズの他にも2冊のヴィヴィアン・サッセンの作品集を出版しているoodeeだが、今作はシンプルながらoodee史上最もしっかりとした作りの(語弊があるかもしれないが)一冊である。続編ということもあり、前作と同じ判型で出版することもできたであろう。事実、oodeeはボックスセットや判型を揃えたシリーズ作を過去に制作している。しかし今回は続編であるにもかかわらず前作『ROXANE』より一回り大きく、今まで制作しなかったような大きな判型で出版された。結果的にこの本は1冊の本として、1つの作品として高い完成度を誇っている。その英断にも拍手を送りたい。

註1. the guardian. Fashion photographer Viviane Sassen: a different take by Sean O’Hagan; 2013 (accessed on 30 July 2017)
https://www.theguardian.com/fashion/2013/oct/12/fashion-photographer-viviane-sassen

タイトル

ヴィヴィアン・サッセン『ROXANEⅡ』

出版社

OODEE

価格

8,000円+tax

発行年

2017年

仕様

ハードカバー/245mm×330mm/152ページ / 1000部限定発行

URL

https://twelve-books.com/collections/all/products/roxane-ii-by-viviane-sassen

ヴィヴィアン・サッセン | Viviane Sassen
1972年アムステルダム生まれ。幼少時を南アフリカで過ごし、現在アムステルダム在住。ユトレヒト芸術大学、及びアトリエ・アーネムにてファッションデザインと写真を学び、卒業後ファッションフォトグラファーとして活動し始める。雑誌『Purple』『Dazed & Confused』などのファッションシューティング、ミュウミュウ、ルイ・ヴィトンなどのキャンペーンも手がける一方で、作家としても高い評価を得る。アフリカを縦横断して撮った作品集『Flamboya』が数々の賞を得た。2012年、アムステルダムのマルセイユ写真美術館で17年間に渡る自らのファッション写真をまとめた回顧展「In & Out of Fashion」を開催し、その後同展覧会は仏アルル写真祭を始めとしてスコットランド、フランクフルト、ウィンターツールなどを巡回。またシカゴ写真美術館、The Photographers’ Gallery(ロンドン)、第55回ヴェニス・ビエンナーレ内メイン・エキシビジョンなど世界中で個展を開催。2011年にはニューヨーク、国際写真センターの「Infinity Award」を受賞。2015年には展覧会「Umbra」がドイツ・ボーズ賞にノミネートされた。また『Flamboya』『Parasomnia』などの写真集が数々の賞を受賞。

河野幸人 | Yukihito Kono
1989年、金沢市生まれ。2011年に渡英し、London College of Communicationにて写真を 学ぶ。多数の作品を本の形態で発表し、2014年に発表した作品『Raster』は、アメリカの 写真専門ギャラリー「Photo-eye」の主宰する年間ベストブックリストの1冊に選出され る。写真家としての活動の傍ら、各国のアートブックフェアへの参加や執筆活動を行うな ど、写真集というメディアを軸に多岐に渡り活動を行う。2017年には自身のアトリエ兼ブックショップアンドギャラリーのIACKを金沢にオープン。

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