Book Review
Viviane Sassen

ブックレヴュー『ROXANE II』ヴィヴィアン・サッセン
写真家、ヴィヴィアン・サッセンの新境地

ROXANE Ⅱ ヴィヴィアン・サッセン 写真集3

では以上の文脈を踏まえた上で本書を開いてみよう。『ROXANE II』はそのタイトルが示すようにある作品の、以前同出版社から刊行された『ROXANE』の続編という位置付けである。これまでのサッセンらしいポージングや色彩も全面的に見られるが、前作には見られなかった「彩色」という要素が1ページ目から全面的に押し出されている。体に直接彩色したもの、その体を押し付けた痕跡、写真の上にペインティングを施したものなど、様々なバリエーションのペインテッド・フォトグラフスが反復される。この時点で、本作は前作の続編でもあるといいつつも、完全に新しい作品であるといえよう。そんな2冊を結びつけているのは作品タイトルにもなっている「ROXANE」だ。

ROXANE(ロクサーヌ)は前作に続き登場するモデルであり、ヴィヴィアン・サッセンの長年のミューズである。しかしサッセンとロクサーヌの関係を撮影者と被撮影者という、片側から一方に向かうものとして捉えるのは得策ではない。ロクサーヌはモデルとしてではなく、元来ファッションエディターとして、そしてスタイリストとして活動してきた人物である。そんな彼女が自らの表現の幅を広げるために選択したのが、アーティストとのコラボレーションによるモデリングという行為なのだ。しかしながら前作『ROXANE』においては依然として、ロクサーヌを被写体にしたファッションシューティングという印象が強く、彼女らが意図する形でのコラボレーションは完全には叶っていなかったように思われる。

ROXANE Ⅱ ヴィヴィアン・サッセン 写真集4

それが今作では、それぞれが表現者として互いのエゴを激しくぶつけあっており、まさにコラボレーションと呼ぶにふさわしい仕上がりとなっている。ここで大きな役割を果たしているのが先ほども言及した彩色という要素だ。本作にはイヴ・クラインのパフォーマンス作品を想起させるような、染料を塗った体を紙に押し当てた作品が所々に収録されている。サッセンの過去の作品においても「身体性」は一つのキーワードであったが、これまではその「フォルム」により着目していたのに対し、本作では「行為を伴う身体」という点が強調されている。それらのペインティング作品は直接的な行為の痕跡であり、そこでの身体の不在はこれまでに以上に、あるいは幽霊的に、そこに写しだされていない身体の存在を示唆している。このフォルムからアクションへの移行が、「見る/見られる」、「撮る/撮られる」という構造を解体し、作品にかつてない躍動感を与えている。