シモーネ・エンゲレン「27 Drafts」
セクシャルハラスメントを受けた過去を癒すために

オランダ人写真家でパフォーマンスアーティストでもあるシモーネ・エンゲレンによる個展「27 Drafts」が、POSTにて開催中。会期は当初2024年7月7日（日）までだったが、7月14日（日）まで延長された。

過去に岡山県にある臨済宗の禅寺、曹源寺を訪れ、修行僧と共に生活をした経験も持つエンゲレンは、作品制作を通して、心を落ち着かせる方法を探求している。

最新作となる『27 Drafts』は、2006年に作家がアメリカでの高校交換留学中に受けた性的虐待がテーマである。この出来事はエンゲレンのその後の人生において、他者との関わり方に深く影響を与え、親密さという概念を再構築するきっかけとなったという。長い間避けてきたこの現実と向き合う決心をしたエンゲレンは、2022年に母親と一緒にアメリカに戻り、カメラを使って制作を始めた。『27 Drafts』というタイトルは、エンゲレンが加害者に向けて27回書いたものの、送られることのなかった手紙にちなんでおり、自分の身体、アイデンティティ、女性らしさと向き合うという、彼女の内なる戦いが視覚的に表現されている。本展を通してひとりの作家の人生を変えた出来事をたどり、寄り添うことで、恥ずかしさや悲しみを超えた対話の機会としてほしい。