バスの車窓からアメリカという国を想う、
海原力「BUS」展

日本とアメリカを中心に活動している写真家の海原力による展示「BUS」が、IG Photo Galleryにて1月28日（土）まで開催中。

海原は2011年よりアメリカを縦横無尽に走る長距離バス（グレイハウンドバス）を利用し、地図を塗りつぶすように旅を続けてきた。アメリカでは鉄道ではなくバス路線が発達したものの、空港が整備されたことで、現在では長距離移動の手段は飛行機が主流となっている。そのためバスは、それぞれの理由で飛行機を選ばなかった人たちの移動手段になっており、アメリカという国の多様性が垣間見える交通機関である。海原は、2017年には、バスの窓から撮影した写真、乗客のポートレート、バス停やターミナルの写真、テキストをまとめた写真集『WHISPERING HOPE』を出版し、マドリードで開かれた国際写真祭「フォト・エスパーニャ」の「THE BEST PHOTOGRAPHY BOOK OF THE YEAR」の私家版カテゴリーで特別賞を与えられ、アレック・ソスによって同年のベスト写真集にも選ばれている。2019年にはIG Photo Galleryで同名展を開催し、今回が2回目の個展となる。

本展では前回発表した「WHISPERING HOPE」（2019年）と同一線上にある作品となっている。今回は新たにスライドショー形式でギャラリーの壁面に作品を投影する展示方法を用いて、2011年から2022年の間に撮影した未発表や新しい作品を加えた作品で構成されている。

被写体は窓を通した風景や、一瞥した光景、すれ違う人々であり、観客にバスで旅する視覚的体験を提供してくれる。展覧会場はバスの車内に変わり、観客はフレーミングされた世界を手がかりに、その外を想像することになるだろう。世界をリードしてきた大国を路上から見たとき、そこに何が見えるのか。ぜひ会場に足を運んでみてはいかがだろうか。