2020年に売れた写真集は何だろう?昨年に引き続き今年も、それぞれ売れた写真集ベスト3といまオススメの1冊を4つの書店に聞いてみた。あれもあった、これもあった−−と1年を振り返りながら、来年も新しい写真集にたくさん出会えることに想像をはためかせてみよう。第1弾は本、映画、音楽を通してライフスタイルを提案する、代官山 蔦屋書店。ギャラリースペースを持ち合わせ、あらゆるジャンルへの感度が高い客層が多く足を運ぶ書店ならではのベストセラー写真集を見てみよう。
セレクト・文=山野一真(代官山 蔦屋書店)
タイラー・ミッチェル『I Can Make You Feel Good』
US版『VOGUE』2018年9月号の表紙を飾ったのはビヨンセ、そして彼女を撮影したのが当時若干23歳のタイラー・ミッチェルだ。本書はUS版『VOGUE』史上初めてアフリカ系アメリカ人が表紙を撮影し(黒人写真家としても最年少)、COMME des GARCONSやJW.Andersonなどのキャンペーンを手がけ、世界的に注目される若手ファッションフォトグラファーである彼の初作品集。映像からの切り抜きやプライベートフォト、仕事で撮影したものがシームレスなセレクトで構成されており、写真家のスタンスを垣間見ることができる。これからのファッション写真(ファッション写真だけにとどまらない)を語る上で見逃せない1冊。
タイトル | タイラー・ミッチェル『I Can Make You Feel Good』 |
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出版社 | PRESTEL |
価格 | 6,980円+tax |
発行年 | 2020年 |
仕様 | ソフトカバー/241mm×319mm/208ページ |
URL | https://store.shopping.yahoo.co.jp/d-tsutayabooks/art56784w-9783791386089.html |
奥山由之『The Good Side』
2011年に出版された『Girl』を皮切りに『BACON ICE CREAM』、『POCARI SWEAT』、『As the Call.So the Echo』など精力的に写真集を出版している奥山由之。『SWITCH 2019.Vol37』では特集が組まれたが、本作はその特集内でコンタクトシートが公開された、平野紗季子との新婚旅行中に撮影された写真で構成されている。フランスのEditions Bessardから、ピンクとブルー2種類の表紙が刊行されたが、よくある表紙の色違いではなく、中ページの用紙までピンクとブルーに分けられている。同じ写真でも余白の色が違うだけでこんなにも印象が変わるのかと、深く考えさせられた。今後の活動もまだまだ目が離せない。
タイトル | 奥山由之『The Good Side』 |
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出版社 | Editions Bessard |
価格 | 【通常盤】12,000円+tax【アートエディション】104,000円+tax |
発行年 | 2020年 |
仕様 | 【通常版】ハードカバー/160mm×212mm/208ページ/各色450部(計900部)【アートエディション】30部限定(各色15部)/2枚のCプリント付き(通常版:130mm×180mm、サイン入り特別版:240mm×300mm)*アートエディションは特別な外箱とサイン入りの通常版より大きいプリントが付属し、中に通常版の書籍が入っている仕様 |
URL | https://store.shopping.yahoo.co.jp/d-tsutayabooks/art56841w.html |
IACK『Art Books:79+1』
2017年に写真家、河野幸人のアトリエとして石川県金沢市に設立されたIACKは、都心ではない場所を活動拠点とし、ハイクオリティの作品集を取り扱っている。「開かれた書斎」というコンセプトのもと、週末は一般開放を行い、現代写真を中心に作品集、作品の販売を行っている。2018年からは日本国内ディストリビューションを開始。本書はそんなIACKで2019年12月までに取り扱ったタイトルを撮影した写真を収録している。巻末には全作品の仕様や書籍に関するコメントを掲載。全ページ天アンカット仕様(ページ上部を裁断しない仕様)だが、ぜひ天袋をカットして読み込んで欲しい。
タイトル | IACK『Art Books:79+1』 |
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出版社 | WELL |
価格 | 2,400円+tax |
発行年 | 2020年 |
仕様 | ソフトカバー/103mm×182mm/200ページ/300部 |
URL | https://store.shopping.yahoo.co.jp/d-tsutayabooks/art56842j-2510000157898.html |
▼いまオススメしたい1冊
コリン・ダッジソン『Deeper Green』
アメリカ、カリフォルニア州出身のフォトグラファー、コリン・ダッジソンの写真集。本作はコリンが2018年にWorld Land Trust(WLT)最初の保護区の30周年に伴い、WLTのジョニー・ルーと共に中央アメリカに滞在した際に撮影された。ベリーズの森林地帯や古代遺跡など、ありとあらゆるものを探索しながらカメラに収められ、本の中に広がる美しい自然や壮大なる夕焼けは、眺めているだけで圧倒される。ファッションフォトグラファーとして活躍する彼だが、洋服を着た女性を撮るときも、壮大な自然を撮るときもその視点に違いはなく、常に真摯な姿勢で立ち向かっていることに気づかされる。彼のファッション写真でも感じられるあの優しい温もりは、その対象を変えても損なわず、素敵な1冊に仕上がっている。
タイトル | コリン・ダッジソン『Deeper Green』 |
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出版社 | 私家版 |
価格 | 7,000円+tax |
発行年 | 2019年 |
仕様 | ソフトカバー/215mm×290mm/108ページ/500部 |
URL | https://store.shopping.yahoo.co.jp/d-tsutayabooks/art56734w-2526200601369.html |
代官山 蔦屋書店
本、映画、音楽を通してライフスタイルを提案する書店。各ジャンルの専門的な知識を背景に生活提案をしていくプロ集団であるコンシェルジュたちが厳選した、世界中の書籍や雑誌、DVD、文具、雑貨を販売。アートフロアには個人出版や限定本を含む、魅力的な写真集やファッション・アート書籍が充実している。
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2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。