最近、日本でも居住空間やインテリアにこだわる人がますます増えているが、アートとなると身構えてしまう人も多いはず。そこで『IMA』Vol.19では、人気インテリアスタイリストの川合将人がアート写真と家具をスタイリング。すると、見慣れたはずの空間に新鮮な風が吹き込まれ、景色ががらりと一変した。部屋と家具とアート作品を上手にリンクさせるポイントを伝授。一枚の写真をきっかけに、暮らしを少し変えてみては?
スタイリング=川合将人
写真=今津聡子
文=IMA
協力=TARO NASU
山本考志&吉田裕美佳邸/用賀
ソリッドな空間なればこその、写真のマジック
閑静な住宅街に立つ真っ白な箱を互い違いに組み合わせたようなコーポラティブハウス。外観も内観も、どこをとっても現代の東京らしいセンスと美意識に貫かれたこの家を訪れた人は、誰もがその魅力にため息を漏らしてしまうにちがいない。ここに住まうのは、ともにインテリア関係の仕事をしている山本孝志、吉田祐美佳夫妻。自分たちの好みを余すところなく反映させたという内観はもちろんのこと、置かれた家具やオブジェの一点一点に至るまで、膨大なインテリアの知識と徹底した美意識から選び抜かれていることが一目でわかる。まるで個人の営むギャラリーのような佇まいさえ帯びている。
もともと置いてあったテレビを外して、ホンマタカシの作品「a song for windows」を3点飾ると、真っ白な壁にまるで別の窓が開いたよう。白いキャビネットが空間に奥行きを生んで、作品との組み合わせも上々。据え付けの棚に置くもので、印象ががらりと変わる懐の深い建築だ。
日本の住居ではなかなか難しい大型作品も、この天井の高さがあれば怖いものはない。ホンマタカシの名作も、ギャラリーのホワイトキューブのような空間に置かれると、まるでもとからそこにあったかのようにすんなりと馴染んでしまった。
Before
After
スツール《ポリプロピレンスタッキングスツール・グリーン》2,500円(無印良品/無印良品 有楽町tel.03-5208-8241)
クールな印象だったダイニングも、写真作品を立てかけてアクセントとなるグリーンのスツールを置いただけで、ぐっと引き締まって個性が生まれる。林を撮影したテリ・ワイフェンバックの作品にグリーンのスツールがぴったり。キッチン奥の調理台にも飯沼珠実がバウハウス建築を撮った小さな作品を3点並べて、色の調和とバランスをとる。大きな家具を入れ替えなくても十分印象を変えることができる好例。
Before
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。