サム・ハスキンス(1926年~2009年)は南アフリカ・ヨハネスブルグ出身の写真家。ヌード×ファッション写真をアートへと昇華させたパイオニアとして知られています。ロックミュージシャンのミック・ジャガーや映画監督のソフィア・コッポラなどファンが多く、業界の垣根を越えて今もなおハスキンスのクリエイティヴィティは世界中で支持を集めています。
また、グラフィックデザイナーとしても評価されており、写真集では写真のみならずデザインや企画なども自身で行うことで有名です。ハスキンスは、ひとつのショットのために複雑な照明を編み出すことが多く、同じ設定は二度と使わないなど作品制作に対する逸話は数知れません。
撮影=竹澤航基
文=小宮山書店
『FIVE GIRLS』
ハスキンスが初めて出版した写真集です。初版は1962年にニューヨークのCrown Publishing、ロンドンのBodley Head、西ドイツはボンのEuropäische Bücherei Hiernonimiと3つの都市で出版されました。
モデルは、Bes、Gill、Anna、Helmi、Shirlの5人。その企画、撮影、プリント、レイアウトのテクニック、最終的な写真集の完成度は1960年代初頭としては群を抜いて目を引きます。
『FIVE GIRLS』マケット
マケットとはフランス語で模型を指す言葉で、写真集においてはその構想模型を指します。例えば、昨年には川田喜久治の『地図』のマケット版がMACK社から出版されるなど現在ではその存在自体が注目されています。
こちらのFIVE GIRLSのマケットはヨハネスブルグのスタジオで1960年から2年をかけて制作されたものです。微小なトリミングの違いは各ページに見受けられますが、製品版との主な違いはイメージにおける白と黒のコントラストの力加減にあります。
マケット版P21では脇の隙間があるのに対し、写真集として出版されたものには焼き込みをして脇の隙間を消しています。最終的な画作りに対するハスキンスのこだわりを感じることができる貴重な資料です。
プリントはゼラチン・シルバー。判型は製品版とほぼ同じで、台紙はクラフトペーパーを使用しています。写真をセロファンテープで貼り付けており、非常にラフな作り。ここから、大胆かつ特徴的なハスキンスのクリエイティヴィティをよりダイレクトに見て感じとることができます。
『COWBOY KATE & OTHER STORIES』
ハスキンス2作目の写真集で、全世界で約100万部を売り上げた代表作。初版は1964年にニューヨークのCrown Publishing、ロンドンのBodley Head、パリのEdition Prisma、ボンのEuropäische Bücherei Hiernonimi、アムステルダムのBesige Bijの5つの都市で出版されました。そのシークエンスもさることながら、1枚毎のイメージのインパクトの強さには脱帽します。
『November girl』
ハスキンス3作目の写真集。初版は1966年にニューヨークのGrossett & Dunlap、ロンドンのBodley Head、パリのEdition Prisma、ボンのEuropäische Bücherei Hiernonimiの4つの都市で出版されました。いままでの写真集では見られなかったコラージュを多用し、ダイナミックなイメージが連続して展開されていく1冊です。
今回紹介した3冊の写真集は、今見てもとても新鮮であり、出版されてから60年程経過してもなお、多くの読者を魅了し続けています。小宮山書店では、一部プリントも展示しておりますので、写真集とあわせてぜひお楽しみください。
小宮山書店
1939年創立の神保町を代表する古書店。写真集、アート・ファッション誌のほか、ヴィンテージのフォトプリントやポスター、アート作品も販売。過去の秀逸な作品に光をあて新しい価値を見出すことで、日本のカルチャーを世界に発信し続けている。
東京都千代田区神田神保町1-7
03-3291-0495
時間:12:00~18:30(日曜・祝日:12:00~17:30)
臨時定休日:火水曜
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