LEICA Summilux 35mm f1.4 First Ver. Steel rimは、1961年から1966年までの短い間、ライツ カナダで設計、製造され、当時ライカの広角レンズでは最速の開放絞り値F1.4を誇り、「世界最高の明るさの広角レンズ」として宣伝されました。
ウォルター・マンドラー博士がMマウント用に設計し、このレンズのプロトタイプはライツ35mm「Campolux」と名付けられましたが、生産開始時には「Summilux」と命名されました。
Summilux 35mm f1.4 First Ver. Steel rimは4つの異なるバリエーションがあり、M3で利用可能なメガネ付きとM2用のメガネなしバージョンの両方がシルバークロームとブラッククロームで合計約8000本製造されました。
内訳は下記のように推測されています。
・メガネ付きシルバークローム4400本
・メガネなしシルバークローム3360本
・メガネ付きブラッククローム160本
・メガネなしブラッククローム80本
ただしM2は広角レンズに受け入れられたカメラだったので、メガネなしブラッククロームは200本程あるのではないかともいわれておりますが、数あるライカレンズの中でも大変希少なレンズであることに間違いありません。
レンズは、5群7枚の変形ガウスタイプで、トリムのないランタン希土ガラスの高い屈折率と、低分散により高性能を実現。絞り開放ではハイライト部が柔らかに滲み、ハロも含む独特の描写を見せます。F5.6くらいまで絞ると驚くほどシャープに解像しますが固くはなく、繊細で優しい描写です。
すっきりとしたレンズ鏡胴のデザインでf1.4を実現しながらも非常にコンパクト。ライカM3用のメガネ付きは最短撮影距離65cmまで近づくことができます(メガネなしは1m)。
Steel rim(スチールリム)とは前玉付近に光沢のあるシルバーのリムがあるため、そう呼ばれています。
このレンズの魅力は何といってもスチールリムとピントリングの無限遠ロックストッパーを纏った流麗なデザインです。スチールリムは光沢あるシルバークロームの質感、無限遠ロックストッパーは無限遠で「パチン」と止まった時の感触がたまりません。
もう一つの魅力はこのレンズの特徴である、開放付近での柔らかくソフトに滲む描写です。逆光では虹を描くフレアが出ることもしばしば、コントラストも弱めで、決して扱いやすいレンズとはいえませんが、撮影した写真はとっても穏やかで優しい気持ちにさせてくれます。絞っていくと穏やかながらもシャープになっていく描写も楽しいです。
同じ頃のSummicron 35mm f2(通称8枚玉)は線が太く立体感のある描写をし、対照的ともいわれますが、渋みのある発色については近いものがあると思います。
また、Summilux 35mm f1.4 First Ver. Steel rimは専用のレンズフード「OLLUX / 12522」が存在します。
フードを装着していない時でもスチールリムが醸し出すオーラで大変美しい外観のレンズですが、楕円形で取付部がくびれた審美的デザインの専用レンズフードを装着すると表情が一変し、目をそらさずにはいられない美しさ、力強さが襲ってきます。
装着方法も独特で上から押しこむ形となり、ライカがクリップオン機能なしでフードを設計しているのは珍しいことです。
このようにライカレンズの中でも独創的な存在感を醸し出すSummilux 35mm f1.4 First Ver. Steel rimですが、このたび2022年11月ライカより復刻されました。発売されてから60年以上経過した現代において、新旧のSummilux 35mm f1.4 Steel rimを撮り比べることができるのもライカの変わらない凄さを感じられます。
撮影=西浦乃安
文=新宿 北村写真機店
新宿 北村写真機店
世界一のカメラストアをコンセプトに2020年新宿にオープン。新品・中古カメラやグッズ、ギャラリーやセルフスタジオ、子供写真館が揃い、機材だけに留まらない豊かなフォトライフを提供している。
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