今月から、写真を探求し続けた2人の作家の回顧展と、さまざまな作家たちによる映像表現を体感できる映像祭が始まっているのをご存知だろうか? 写真好きにとっては目が離せないであろう3つの展覧会を通して生まれる、新たな発見を体感しよう。
恵比寿映像祭 2024 「月へ行く30の方法」
2009年に始まった恵比寿映像祭は、東京都写真美術館を中心とする恵比寿を舞台に、展示、上映、ライヴパフォーマンス、トークセッションなどを複合的に行ってきた映像とアートの国際フェスティバル。今年は「月へ行く方法」というテーマのもと、2月18日(日)まで開催中。
本展のテーマは土屋信子「30 Ways To Go To The Moon/月へ行く30の方法」展(2018 年)のタイトルより引用されている。アメリカのアポロ11号による月面着陸から半世紀以上が経ち、技術的には人間が気軽に月へ行くことも可能になりつつある。しかし月へ向かうためには、最新の技術や論理とは一見結びつかないようなアーティストたちの思考や実践による新たなる創造力が今日の私たちには必要だ。
東京都写真美術館2階展示室では、東京都写真美術館のコレクションとともに、荒川ナッシュ医や関川航平、中谷芙二子、ミヤギフトシなど、多様なアイデンティティを持つアーティストたちの作品を紹介しながら、それぞれの視点や思考をひもとく。地下1階展示室では、科学や理論では解明しきれない未知なる可能性や思考を示唆する作品やプロジェクトを紹介する。3階展示室では、前回コミッション・プロジェクト特別賞受賞アーティストである荒木悠と金仁淑の作品が展示される。また、地域連携プログラムとして、恵比寿周辺の会場で川内倫子やヴィム・ヴェンダースの展覧会なども同時開催。会期中は、ライブイベントやトーク、ディスカッション、ワークショップなども行われ、「月へ行く方法」という命題を作品を通してアーティストと観客とが共に考え、あらゆる角度からイメージの可能性を追求する。
タイトル | 恵比寿映像祭 2024「月へ行く30の方法」 |
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会期 | 2024年2月2日(金)〜2024年2月18日(日) |
会場 | 東京都写真美術館、恵比寿ガーデンプレイス センター広場、地域連携各所ほか |
時間 | 10:00〜20:00(18日は18時 まで) |
休館日 | 月曜日 |
入場料 | 無料 |
URL |
「中平卓馬 火―氾濫」
戦後日本を代表する写真家、中平卓馬の没後初となる大回顧展「中平卓馬 火―氾濫」が、東京国立近代美術館で2024年2月6日(火)〜4月7日(日)まで開催される。
1938年生まれの中平は、大学卒業後に勤務した月刊誌『現代の眼』編集部を通じて出会った写真家、東松照明をきっかけに写真に関心を持ったことから写真家、批評家として活動を始める。1968年に多木浩二、高梨豊、岡田隆彦を同人として季刊誌『PROVOKE』を創刊。誌面にて「アレ・ブレ・ボケ」で鮮烈なイメージを残し、同時代の写真家たちに多大な影響を与えた。1973年には評論集『なぜ、植物図鑑か』を刊行。常に写真表現を探求し続け、新しい方向性を模索していた最中の1977年、急性アルコール中毒で倒れ、記憶の一部を失う。療養の後は写真家として再起し、2010年代はじめまで活動を続けた。
本展は5つの章で構成されており、初期から晩年まで649点の作品、資料を通して、これまでの中平の活動の軌跡をたどる。特に、1977年に不慮の昏倒と記憶喪失によって中断されてしまった当時の中平の活動は、どこへ向かおうとしたのか、その経緯を掘り下げる。また、近年発見された《街路あるいはテロルの痕跡》の1977年のヴィンテージ・プリントが初公開されるほか、1974年に同会場で開催した「15人の写真家」展の出品作《氾濫》を半世紀ぶりに再展示する。思考と実践を繰り返しながら、写真への問いをひたむきに続けてきた中平卓馬というひとりの人生を通して、写真とは一体何なのか思いを巡らせる機会となるだろう。
タイトル | 「中平卓馬 火―氾濫」 |
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会期 | 2024年2月6日(火)〜4月7日(日) |
会場 | 東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー(東京都) |
時間 | 10:00〜17:00(金・土曜は20:00まで) |
休館日 | 月曜日、2月13日(火) |
入館料 | 一般 1,500 円、大学生 1,000 円 |
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「生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真」
最後に紹介するのは、東京ステーションギャラリーで開催される「生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真」展。会期は2024年2月23日(金・祝)〜4月14日(日)。
安井仲治は、アマチュア写真家たちの芸術表現の探求が活発だった大正・昭和戦前期を牽引した写真家。活動期間は18歳から38歳までの約20年という短い期間だったものの、日本写真史に残るような多彩な作品を発表する。安井は早くから欧米の先進的な写真表現や理論を受容し理解するとともに、独自の被写体を見出す感性を持ち、他者が気づかないような隠れた美を掬いあげる作品を生み出した。同時代の写真家をはじめ、土門拳や森山大道など後世に活躍した写真家たちにも刺激を与えてきた。
20年ぶりとなる回顧展となる本展では、戦災を免れたヴィンテージプリント約140点、ネガやコンタクトプリントの調査に基づいて制作されたモダンプリント約60点など、〈メーデー〉や〈半静物〉〈山根曲馬団〉などを含む200点以上の出展作品で構成される。本展は、愛知県美術館、兵庫県立美術館を巡回してきており、このボリュームで作品が見れる最後の貴重な機会だ。100年の時を超えてもなお色褪せない、安井の写真の魅力に迫る。
タイトル | 「生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真」 |
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会期 | 2024年2月23日(金・祝)〜2024年4月14日(日) |
会場 | 東京ステーションギャラリー(東京都) |
時間 | 10:00〜18:00(金曜日~20:00) |
休館日 | 月曜日 |
入館日 | 一般1,300(1,100)円、高校・大学生1,100(900)円、中学生以下無料 |
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