ニコンプラザ東京・大阪の写真展会場「THE GALLERY」にて、別所隆弘の写真展「煙か闇か爆ぜ物」が2月25日(東京)、3月20日(大阪)より開催される。
別所は関西大学社会学部メディア専攻講師を務める文学研究者にして写真家。写真の根源である「光」と「闇」を、花火をテーマとして制作。花火の光と闇、そして副産物である煙を通じて、「時間」と「空間」への問いを発する展示。研究者である別所にとって展示は研究発表に近いものになるという。
【ステイトメント】
火薬が爆ぜる。爆発する。闇の中に光が放たれる。
夜の闇が光で満たされ、見上げる顔には驚きが、笑顔が、もしかしたらその爆発を生まれて初めて見る赤ん坊の泣き顔が、様々な感情が千変万化する炎色反応のように人々の顔に浮かび上がる。花火はまさに夏の夜空を染め上げる「華」だ。だが私がその美しい光と共に心惹かれるのは、その爆発直前の予感に満ちた沈黙と、爆発直後の余韻。起源の直前の闇と、副産物のように生まれ出でる煙なのだ。
大きな花火が空に打ち上げられる直前に、闇が広がる。爆発を前に息を呑む我々の期待が、まるで宇宙を満たすダークマターのように、見えない重力源さながら夜の闇に満ちていく。そして、閃光、世界を祝福するように輝く花火、と同時に、どこから生まれたのか不思議に思えるほどの、花火そのものを覆い隠しかねない膨大な煙とが、花火を邪魔し、時に、まるで神々の児戯が見えざる手で捏ねたような、美しい形を花火に添える。一瞬で崩壊する。
闇の無から現れ、一瞬の閃光と共に指数関数的に増えていく煙の様相まで、花火というのはその過程そのものが、まるで宇宙の創世、ビッグバンを何度も何度もやり直しているかのような、そんな感触がある。あるいは、エントロピーが増大し、熱が失われ、この宇宙全てが終わる瞬間「熱的死」の予行演習にも思えてくる。その壮大なスケールは、物理と偶然性が一回限りの「瞬間」として記録されることでアートに昇華する、写真という営為の象徴でもあるように思えるのだ。
だからこそ、花火の光を愛すると同時に、全てを飲み込む闇と全てを覆い隠す煙も、私は愛してやまない。
タイトル | THE GALLERY 企画展 別所 隆弘 「煙か闇か爆ぜ物」 |
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場所 | ニコンプラザ東京THE GALLERY(東京都新宿区西新宿1-6-1 新宿エルタワー28階)
ニコンプラザ大阪THE GALLERY(大阪府大阪市中央区博労町3-5-1 御堂筋グランタワー17階) |
会期 | 東京/2月25日(火)~3月10日(月)
大阪/3月20日(木)~4月2日(水) |
時間 | 10:30〜18:30(最終日は15:00まで) |
休館日 | 日曜日 |
料金 | 無料 |
URL |