東京・日本橋馬喰町のparcel にて、永井天陽(ながい・そらや)と川谷光平による2人展「The Garden」が10月19日まで開催されている。本展は、異なるメディアを扱う2人のアーティストが「庭」という共通のモチーフから新作を発表する試みだ。
彫刻と写真という異なる表現手法を用いながら、両者はともに「過去の日本」を想起させるような懐かしさを呼び起こすモチーフに取り組んでいる。庭は人間の手によって形成された人工的な自然でありながら、鑑賞者のまなざしによって異なる風景を生成する可変的な空間でもある。本展では、庭が単なる風景ではなく、記憶や感覚を呼び起こす装置として機能し、多様な解釈を誘う。
永井は日常の中に潜む違和感を掬い上げ、認識の仕組みを問い直す彫刻作品を制作してきた。本展では、アクリルで制作した外殻の中に異なるモチーフを封じ込めた新作シリーズを発表。アメリカ式ガーデニングに見られる装飾物から着想を得た作品群は、外形を共有しつつも内部に異質なイメージを抱え込み、互いに共鳴しながら新たな関係性を立ち上げる。可視/不可視、内/外の境界を曖昧にし、現代社会におけるイメージの不確かさを静かに示唆する。
一方、川谷は日常的なモチーフを鮮やかな色彩と至近距離から捉える。本展では1970年代に日本へ輸入され、当時のハンドクラフトブームの中で広まった「アメリカンフラワー」に焦点を当てた。この名と実態のずれに川谷はユーモアと批評性を見いだし、20世紀半ばの「理想化されたアメリカ像」と今日の感覚の断層を浮かび上がらせる。超高解像度のデジタル撮影によって質感を際立たせることで、写真の制度そのものにも目を向けさせる。
2人の作品に共通するのは、視覚表現のメディウムそのものに対する意識的な距離の取り方だ。庭の装飾や植物といったモチーフは単なる風景の構成要素ではなく、視線を誘導し、意味を生成する装置として機能する。人工と自然、象徴と日常、意図と偶然のあわいを往還する両者の作品は、「見る」ことから「知る」へ、さらに「信じる」へと移行する認識の回路を提示する。本展は、現代の視覚体験に対する新たな問いを投げかけるだろう。
タイトル | The Garden |
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場所 | parcel(東京都中央区日本橋馬喰町2-2-14 まるかビル2階) |
会期 | 9月20日(土)~10月19日(日) |
時間 | 13:00〜20:00 |
休廊日 | 月・火曜日 |
料金 | 無料 |
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