写真家・松尾修の新作写真集『Other Shore』が刊行された。松尾が生まれ育った長崎県佐世保市を舞台に、2023年から2026年にかけて撮影した身近な人々と風景78点をモノクロームで収録する。
米海軍が駐留する基地の街であり、日本の高度経済成長を支えた造船の街でもある佐世保。松尾は商業写真家として東京で活動する一方、長年にわたって故郷へ通い、そこに暮らす人々や風景を撮影してきた。代表的な連作「サセボプロジェクト」をはじめ、その制作では一貫して「写真」と「写真を残そうとする人間の心」を見つめている。
タイトルの「Other Shore=向こう岸」が示唆するように、本作で松尾は東京と佐世保、過去と現在、虚と実、そして写真の「向こう側」と「こちら側」とを往還する。カメラの前に確かに存在したはずの身近な人物や風景は、写真として定着された瞬間、「いたかもしれない人々」へと姿を変えていく。そこから浮かび上がるのは、記録でありながら現実そのものではないという、写真というメディアが本来的に抱える不可思議さだ。
巻末には、松尾自身によるエッセイ「滅びの予感」を日本語と英語で収録。佐世保という街の歴史と、写真というメディアの本質をめぐる作家の思索が、写真群と呼応する。また、布張りの上製本による表紙には、「向こう側の世界」を象徴するミラープレートを貼り込み、写真集そのものの造本にも作品のコンセプトを反映させた。装丁はThere Thereの渡辺和音が担当している。
松尾は1970年、長崎県佐世保市生まれ、東京在住。これまでに『他人のアルバム』『写真論』のほか、「サセボプロジェクト」として『坂道とクレーン』『誰かのアイドル』『HEAVY METAL』『17』などを刊行している。
松尾修『Other Shore』
価格:6600円(税込)
発行:CLOCK Inc.
