東京には、個性的なセレクトが光るブックショップが数多く点在する。その中で、アートに力を入れる大型書店や個性的なアートブックやZINEを扱うインディペンデントブックショップなど、写真集を扱う4店舗の書店員が、毎月おすすめの写真集を3冊ずつピックアップ。
セレクト・文=黒木晃(UTRECHT)
オランダの作家、シャンタル・レンズによる写真のコラージュ作品集。犬や猫、ハリネズミ、馬、魚などさまざまな動物たちが、なぜか背中にお酒の入ったグラスを乗せている。理不尽な状況にありながら、いたって冷静な動物たちの表情には哀愁すら漂う。タイトルはイギリスのソウル・R&Bシンガー、ビリー・オーシャンのデビュー作から。「You Run Around Town Like a Fool and You Think that it’s Groovy(ふざけた調子で町を駆け抜けて、君はそれがグルーヴィーだと勘違いしてる)」。単なる動物の写真群が、背中にグラスを乗せるというワンアイデアのコラージュによって、何度もページをめくってしまう。一見無意味な行為も、繰り返されることで意味性を帯びていくのかもしれない。
タイトル | シャンタル・レンズ『You Run Around Town Like A Fool And You Think That It’s Groovy』 |
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出版社 | PANTOFLE BOOKS |
価格 | 3,500円+tax |
発行年 | 2016年 |
仕様 | ソフトカバー/280mm×200mm/100ページ |
URL | http://utrecht.jp/?product=you-run-around-town-like-a-fool-and-you-think-that-its-groovy |
「Cats and Dogs in the Window」は、シャンタル・レンズによる新たな写真プロジェクト。彼女は普段歩いている途中で出会う、窓際の犬と猫を日々撮影しては、SNSにアップロードを続けている。カーテンの隙間から、観葉植物の横に。退屈な室内から、外の世界に出たいのか、それとも、忙しく動き回る人間の世界を哀れんでいるのか。なぜか窓際の隙間に集う彼らの習慣。けなげな表情やポーズがどこか笑いを誘う。何気ない窓際のインテリアに、飼い主の人となりが垣間見えるのも面白い。キャノンの写真用紙に印刷し、バインディングしただけの製本も可愛らしい一冊。
タイトル | シャンタル・レンズ『Cats and Dogs in the Window#1-4』 |
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出版社 | Cats and Dogs in the Window |
価格 | 3,800円+tax |
発行年 | 2017年 |
仕様 | ソフトカバー/163mm×100mm/30ページ/ファスナー留め製本 |
URL |
東京在住のアーティスト、田巻裕一郎は、アメリカのハードコアバンドBLACK FLAGの「MY WAR」デザインを毎日着ることを自らに課し、2015年からインスタグラムに写真を投稿している。終了するのは、彼が自分自身に負けたときか、死んだとき。彼の日々の投稿は、彼の生存確認であり、彼が彼自身との戦いに勝った記録でもある。自らシルクスクリーンでプリントを施し、それを身につけるという行為は、現代版のDATE PAINTINGといえるかもしれない。本書は、彼の2015年から2017年までの2年間分の投稿(730枚)を収録した一冊。写真はインスタグラム上で誰でも見ることが出来るが、こうして本のかたちにまとまると、改めてその途方もなさに圧倒される。
タイトル | Yuichiro Tamaki『MYWAR_YUICHIRO』 |
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出版社 | TANG DENG |
価格 | 2,500円+tax |
発行年 | 2017年 |
仕様 | ハードカバー/150mm×150mm/176ページ |
URL |
UTRECHT / NOW IDeA
アート・デザイン・ファッションなどの書籍を取り扱う神宮前のブックショップ。
ギャラリーが併設された店内には、普段お目にかかることの出来ない国内外のインディペンデントパブリッシャーやアーティストのZINE、書籍などが多数並ぶ。
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前5-36-6 ケーリーマンション2C
tel: 03-6427-4041
12:00~20:00
月曜休み(祝日の場合は翌日)
http://utrecht.jp/
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。